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第四百十九話 プラン

「宗歩流四間飛車」

 これは、江戸時代の将棋だ。江戸時代の将棋は、陣形の厚みを最も重要視している。それはまるで、桂太くんのように。


 現代将棋は、陣形の"固さ"が最も大事だと言われている。人間は間違いを犯す。どんなに強い人でも、勘で指さなければいけない時は必ず訪れる。そのリスクを回避するのが守備力だ。陣形がしっかりしていれば、多少のミスでも挽回(ばんかい)できる。


 そして、現代から人工知能の時代になった最近は、固さと広さが重要視されている。厚みがあり、そこそこ固い陣形が理想だ。


 だからこそ、最近の将棋は、時代を(さかのぼ)っている。

 古い形が、新しい解釈とともに生まれ変わって転生する。江戸時代の流行に、人工知能が着目するのは、人間の叡智(えいち)のおもしろさだ。


 盤の中央付近にぶ厚い陣形(要塞)が出現する。

挿絵(By みてみん)


 これで私の作戦勝ち。たしかに相手の居飛車穴熊は固いけど、こちらは相手の動きを封殺できる好位置を確保できている。犬養くんは、手が作れずに、少しずつ悪い手を指すことを強要されてずるずる形勢が悪くなるはず。


 私が矢倉を内緒で勉強していたのも、この感覚を身につけるためだった。

 つまり、二段ロケット。矢倉を勉強して、厚みの感覚を身につけて、そして、本命のこちらを全国大会までに完成させる。


 私と高柳先生が、この1年間極秘にしてきた遠大な作戦。

 先生が四間飛車穴熊を最も得意としているのに、天野宗歩の棋譜をそう確認して、定跡を作ってくれた。あの日・あの合宿先を選んだのも、社会人の強豪チームが同じ時期に合宿を行う情報を得ていたから。


 先生は、あの時、実力試しと称して、天野(あまの)矢倉(やぐら)五筋位取(ごすじくらいど)り相がかり、そして、この宗歩流四間飛車を使ってデータを集めてくれた。


 私が、地区大会の決勝で、片矢倉を使った矢倉早囲いを使ったのもこの計画の流れだ。

 片矢倉の別名は……


 天野矢倉。


 すべては、全国大会の勝利のために。

 大事な対局では、事前の準備が最も重要。だからこそ、私たちは1年以上の極秘の密会を繰り返した。そして、周囲の人たちの影響の上に、私はここに立てている。


 だから、勝つ。


――――――――――――

用語解説

宗歩流四間飛車……

江戸時代の棋聖"天野宗歩"が指した四間飛車の形。本来なら美濃囲いという横に強い防御陣地を作るはずの四間飛車が、逆に縦に厚い陣形を組んで、相手の指す手を封殺する。

今回の形は、偽装宗歩流四間飛車というさらに進化した形。

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