表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
411/531

第四百十一話 はつこい

 さあ、乱戦になった。私はまとめきれるか分からないけれど、自分の考えに従って将棋を前に進めた。

 もう私が準備してきた局面からは遠く離れてしまった。この先は、未知の分岐点(運命の選択)


 私は攻撃の陣形を作ったが、隙ができてしまっている。もちろん、相手が見逃すわけがない。

 即座に角打ち。この後に、自陣に引き返して、守りに馬を加えるつもりだと思う。

 私は、ここで狙っていた手を指す。


 未だに、私の心の中で一番大きな存在。

 あきらめなければいけないのに、あきらめてはいけない人。


 人の心って矛盾ばかり。将棋みたいに、全部、論理(ロジック)ならいいのにね。

 私は、この数か月で、はじめて、恋をした。

 

 最高の時間だった。


 でも、私の最高の時間は、苦い思い出で幕を閉じた。


 ※


「私は先輩が好きです。将棋で、見たこともない世界に連れていってくれる先輩も好きです。でも、一緒に普通のことをして、普通に楽しめるところが一番好きなんです。だから、ずっと先輩といっしょにいたいんです。私と、付き合ってください」

「葵ちゃん、ありがとう」

「答え、教えてください」

「うん」

「ごめん、他に好きな子がいるんだ。だから、葵ちゃんの気持ちには、こたえられない」


 ※


 こうして、私の初恋は終わりを遂げた。

 でも、私はまだ、彼を諦めきれていない。

 だから、こんな陣形を作ってしまうんだろう。

挿絵(By みてみん)


 雀刺し。

 本来は、矢倉を倒すための陣形だが、私は相振り飛車でもこれを応用する。


 そして、これは……

 大好きな人(桂太先輩)がよく指していた形だった……


―――――――――――――――

用語解説


雀刺し……

歩と香車・飛車を連ねて、一点突破を狙う戦法。

主に矢倉崩しに使われており、矢倉の森下システムの天敵でもある。

ちなみに、テレビでも大人気の加藤一二三九段も彼が名人を獲得した前後の80年代に愛用していた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ