第三百九十八話 神の存在領域
詰みそうで、詰まない。
時間が足りない。どうして、俺の頭の処理速度はこんなに遅いのだろうか。
才能がうらやましい。
だからこそ、深く読む。時間をギリギリまで使う。才能を言い訳にしない。憧れの人、すべてを努力で補ってきた人の目の前で、その言い訳は最大級の侮辱だ。
桂太は言っていた。
最大限、考えた先、限界のその先に、思考のスピードが歪む瞬間があると……
大名人が言っている<思考の時速300キロの世界>のようなものだろうか。俺みたいな凡人でもたどり着くことはできるのか。一瞬だけでもいい。
もっと深く、深く、深く、深く、深く、深く、深く、深く、深く、深く、深く、深く、深く、深く、深く、深く、深く、深く、深く、深く、深く、深く、深く、深く、深く、深く、深く、深く、深く、深く、深く、深く、深く、深く、深く、深く、深く、深く、深く、深く、深く、深く、深く、深く、深く。
頭の中の時間感覚が少しだけズレた気がした。
一つの解答が頭に浮かんだ。
(▲2三金△同 玉▲2四銀打△1二玉▲2二銀成△同 銀▲同 と△同 玉▲2三銀打△2一玉▲3二香成)
そうか。これだ。
俺は、ひらめいた手順にすべてをかけた。




