第三百九十四話 研究とオールイン
猛烈な攻撃が襲いかかる。
これで間違えれば即座に、敗勢になる。研究範囲だが、もしかしたら途中に相田さんの最新研究が用意されている危険性もある。だからこそ、どの局面で時間を使うかもかなり重要だ。
彼女の戦い方は、研究という真理追及の局面とどこに隠し玉があるのか相手をメンタル的に追い詰める勝負術という二面性を含んでいる。対局相手としては、とてつもない脅威。
慎重にしかし、大胆に。俺は彼女の研究手順がいつくるか、ドキドキしながら定跡をなぞっていく。
俺が待つ理想形を求めて。
そして、約束の時は来た。
47手目の角打ち。▲8二角だ。
この時を待っていた。
誰が、彼女だけしか研究を用意していないと錯覚していた?
彼女の研究は、かなり公になっている。それは素晴らしいことだ。しかし、同時にリスクでもある。
それは彼女の研究を下敷きにして、さらなるルートを見つけることが可能になることだ。だが、彼女の研究自体が膨大な時間を使って体系化していることもあり、その抜け道を見つけることは、無数にある針の穴の中から唯一の正解を見つけるととに等しい。
だからこそ、無数にある変化の中から、この変化になるように誘導した。
俺が唯一見つけた彼女の巨大な要塞の弱点だったから。
だが、この変化を彼女が選ぶかどうかはわからなかった。
だから賭けだった。俺はひとつだけの可能性に賭けて、ここに全賭け。
まだ勝てるかはわからない。でも、勝てる可能性が一番高いところまで誘導はできた。
ここから先は、努力だけは誰にも負けたくない。




