表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
391/531

第三百九十一話 専門家の意地

 先手が相田さんになった。

 俺は後手だ。


 後手なら一手損角換わりも選択肢に入るが、今回は俺も普通の角換わりを志向する。相居飛車の場合は、お互いに戦法の合意が必要になる。しかし、角換わりは、居飛車党なら絶対に必須の戦法であり、最も誘導しやすい戦い方だ。


 だから、俺もこの戦法の専門家(スペシャリスト)になることを選んだ。狭い範囲で勝負ができる角換わりは、部長や桂太(持てる者)に必死で追いつくために、考えた()()()のような弱者(持たざる者)の戦略だ。


 俺たち。

 たぶん、俺の目の前にいる相田さんもきっと同じだ。

 周囲に圧倒的な才能(怪物)がいる教育大付属で、レギュラーになるために必死に努力をした。その結晶(努力)が彼女のブログの研究で、出版した電子書籍に書かれている大量の変化だ。


 彼女の育ちがいい余裕がある趣だが、本質は根性と努力の人だ。

 じゃなければ、あの膨大な熱量の塊を作れるわけがない。


 だからこそ、俺の憧れの存在だ。俺が立ち止まるわけにはいかない。だって、彼女が俺の目の前をひたすら走っていたから。


 さあ、はじめよう。

 プロフェッショナルの意地と意地のぶつかり合いを。


挿絵(By みてみん)


 最新のAI(人工知能)が作り出した定跡。

 角換わり4八金・2九飛車型。先手も後手もほぼ同じ形から戦いが始まる。研究が活きやすく、お互いの努力の結晶が盤面に現れるのだ。


 さあ、ここからは根性と努力のぶつかり合いだ。


―――――――――――――

用語解説


角換わり4八金・2九飛車型(通称"新型同形")……

細心の将棋ソフト(AI)が好む形が、人間の将棋界にも輸入された形。

2016年のNHK杯決勝で、表舞台に登場し、従来の定跡に激震を走らせて、従来の角換わり定跡を"旧型"へと追いやった。2020年現在でも、プロの将棋界では中心的な戦法となっている。

従来型よりもバランスが良く、攻撃も早い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ