第三百八十八話 動き出す王者
教育大付属side
「源葵の圧倒的な終盤力での切り合いと、米山の泥沼流で、完勝か。セットカウント3対1で、西関に圧勝、強いね~。ねぇ、犬養部長?」
「渋宮、ずいぶんと楽しそうだな。俺たちが次に戦う相手の良いところを上げて、あまり士気を下げるなよ」
「だって、先輩たち強すぎて、私の出番が回ってこないんだもん。この2日間、ちょう暇ーなんですよー。だから、次は出番まわってくるとイイナ~」
「それ、先輩に負けろって言ってることだから」
犬養部長と渋宮がいつものようにじゃれている。
ふたりともリラックスしている。
さきほどの準々決勝も3-0の完勝だった。俺は試してみたかった中原流急戦矢倉で完勝。正確にやれば、俺が悪くなる手順もあったが、人間では発見するのが難しい手順だ。だから、気楽にさせた。
「早く、大会終わらせて、ソフトとだけ指していたい」
俺はそうぼやく。
「うわ~、生意気な発言ですよ、注意してあげてくださいよ、部長?」
「豊田、おまえは失言が多くて、よくネットで叩かれているんだ。少しくらい自重しろ」
めんどくさ。
「だって、人間と指しても、面白くないんですもん。そりゃあ、トッププロと指すのはさすがに楽しかったですよ。名人とだって、いつかは指したいです。でも、中途半端な相手じゃ、むしろ弱くなる気がして。それに、ソフトと違って人間だと、変な癖があるひと多いじゃないですか。元・アマ名人とか。あれ、どうにかならないかなって思うんです」
「だめだこいつ、完全にソフトになっていやがる。早くどうにかしないと」
部長はあきらたのか何も言わなくなった。
「ふつう逆ですよ。豊田センパイっ」
「でも、ひとりだけ気になるやつがいるんだよな」
「「えっ」」
いや、驚きすぎだろ。
「次に戦う佐藤桂太ってやつ。あれ面白い」




