表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
385/531

第三百八十五話 か・い・か・ん

「ふふ、楽しいね。佐藤桂太くん。私とっても楽しいよ。やっぱり、人の陣形を蹂躙(じゅうりん)するのって、最高に楽しいよね?か・い・か・んってやつ~」

 彼女は、もはや怪しい笑みまで浮かべてきていた。将棋は、自分が思い通りの展開になると、脳内麻薬のようなものが出てきて、とてつもない爽快感があふれてくる。難しい詰将棋を解けたとき、相手を一方的に攻め潰したとき、苦しい将棋を逆転できたとき。


 将棋をしていて本当に良かったと思うのだ。

 

 まずい。状況ははっきり言って悪かった。やはり、攻撃の速度が早い。それもずば抜けて早いのだ。

 超高校級の攻撃力。噂は伊達じゃなかった。右四間飛車は、攻め駒を一点に集中させて突破を図る戦法だ。火力はすさまじいものの、狙いが分かりやすい。よって、定跡通りに対策を作ってみたが、彼女はやはり曲者(くせもの)だ。俺の陣形を見るや、定跡を外れて力戦へ。


 右四間飛車はブラフとも言わんばかりに、攻めの形を流動的に変えてB面攻撃に移行する。そのまま、一気に攻め続けていく。俺の陣形は簡単に崩壊した。


「あまりに一方的すぎて、言葉も出ないのかな~ お姉さん、いじめすぎちゃったみたいだね。早く仕留めてあげないといけないよね。だからさ、早く形作りして首さしだしてよ。潔い男の子、好きだよ、わたし~」

 言葉には騙されないで考え続ける。 

 抜けはないか。俺の目指す理想像に間違いはないか。それだけを必死に考え続けた。


「ショックで無視か。じゃあ、仕留めるよ~ 仕留めちゃうよ~ はい、これで完了」

 端攻め。

 やはり、ここからさらに攻めてくるのか……


 ……………………

 ………………

 ………… 

 ……


()()()()

 計画通り。

 ここまでは、全て狙い通りだ。


 たしかに、一方的な展開だった。このままいけば、確かに負けてしまう。

 だからこそ、逆転の一手を指すタイミングを狙わなくてはいけない。

 それがこのタイミングだ。


 彼女の攻めは早すぎるのだ。将棋において、タイミングはもっとも重要だ。

 遅すぎても、早すぎてもいけない。

 彼女のタイミングは悪かった。


「過ぎたるは及ばざるが如し、ですよ。市谷さん」

「なに、言ってるの?」

「やりすぎは、足りないことと一緒です」

 俺は静かに逆転の一手を放った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] うっわー、かっこいいです! かいかんっ〜♪ 文人にも萌えましたが、主人公、さすがです、ゾワゾワします。 更新が待てません。 どうかお身体気をつけて、完結までよろしくお願いします。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ