第三百八十二話 幕間
「すごい第一試合だったな」
「ああ、相入玉寸前で、辻本が丸内玉を押し返して逆転だよ」
「中盤まで、辻本敗勢だったのに、いったい何回終盤があったんだかわからないくらい逆転しまくったよな」
「最後は泥試合にしてでも引き分けに持ち込もうとした丸内の執念。やっぱり、年に一回しかない高校生の夏って言う感じがするよな」
「感動して、少し泣いちゃったよ」
「しかし、ついにあの学校が、1セット落としたな」
「そこは、やっぱり関西最強。優勝候補の一角と最強のダークホース。第1戦からすさまじい激闘だな。次も試合も楽しみだよ」
※
会場は、文人の将棋で盛り上がっていた。
あんなに指せるとは思わなかった。なんだよ、全国準優勝といい勝負しちゃうなよ。健闘したふたりに拍手。そんな、生ぬるい感想なんて、聞きたくない。
この大会は結果がすべてだ。
そして、文人は負けた。
一番勝ちたいと思っていた奴が、負けたんだ。
会場の声なんて、文人の悔しさを深めるだけだ。
あいつには、勝利しか見えてなかったんだから。
「桂太……」
文人は震えながら、廊下を歩いていた。
俺は一言だけ文人に伝えた。
「悔しさは、次で晴らそうぜ」
「ああ、俺を次に連れていってくれよ、親友」
俺は、文人とすれ違って背中越しにうなづいた。
「あたりまえだろ、親友」




