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第三百七十六話 準優勝者

「ふん、あんたが柿谷を倒した奴か。どんな奴かと思えば、こんな感じか。はじめましてでいいんだよな」

「はい、辻本さん。俺はあなたをよく知っていますが、あなたは僕を知らないはずです」

「まったく、東京もんは回りくどい話し方をしやがる。悪く思わないでくれ。俺は人の名前を覚えるのが苦手なんだ」

「おぼえさせてあげますよ。この対局が終わったら」

「ふん、口だけは達者だな」


 辻本智一。

 関西最強校のエースであり、前回大会の個人戦で準優勝。

 前回大会で唯一、豊田政宗とやりあえたとも呼ばれる西関高校の英雄だ。

 将棋がめちゃくちゃ強いのに、記憶力は自信がなく、自分が認めた相手しか名前を覚えないと言われている。


 俺が先手となった。

 いつものように角の道を開ける。


 辻本さんも同じように角道を開けた。やはりか。この人の狙いは……


「あんたは、俺の将棋をよく知ってるだろう?」

「知らないわけがないでしょ」

「じゃあ、遠慮なく」

 一手損角換わり。後手の辻本さんが、一手損してお互いの角を交換した。

 ここまでは普通の将棋だ。だが、彼は関西の英雄。

 普通の将棋をするわけがない。


 辻本さんの将棋は、"黒魔術"とも言われる。

 彼にしかできない将棋で、彼だけが指しこなせる特殊な理論で将棋を組み立てる。


 俺は早繰り銀で勝負をかける。彼の理想形が完成する前に攻め潰す。

 そう宣言した。


「ふん、顔に似合わずに攻めてくるな。嫌いじゃないぜ、そういう闘志」

 そう言って、辻本さんは自分の玉に手を取った。


 これで、はじまる……

 辻本流"三段玉"。

 

 本来はタブーとされている自分の王様を最前線に立たせる狂気の力勝負だ。


挿絵(By みてみん)


―――――――――――――

人物紹介


辻本智一……

関西最強校の高校生。独特の将棋を指し、アマチュア将棋界の異端児として知られるが、その実力は本物で、全国準優勝2回、3位1回と安定した結果を残す。

その将棋は、徹底的に勝ちにこだわり"負けない将棋"とも言われる。


用語解説


辻本流"三段玉"……

元ネタは、戦後すぐに活躍した間宮純一が考案した間宮流。

詳細は次回解説へ。

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