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第三百七十四話 バグと新手

 中原流急戦矢倉。

 大名人"中原誠"が発明した後手の矢倉から急戦を仕掛ける超攻撃特化の戦法だ。最強の攻め将棋として有名な豊田政宗らしいチョイスだが、この戦法にはひとつ問題がある。


 それは、守りがとてつもなく柔らかいこと。

 攻めの駒が中央に集中することで、守りが薄くなる。


 それをカウンターすることで先手が勝ちまくって、この戦法は廃れてしまった。結論として言えば、大名人しか指しこなせない戦法という位置にいる。


 ここで豊田がそれを使ったということは……

 この戦法を使いこなせる自信があるということを宣言したのだ。大名人しか、将棋の神さまに許されなかったこの戦法を……


 まさに、自分が神の地位にいることを高らかに宣言するような大胆不敵な態度だ。


 ※


 手が進む。すでに局面は中盤に達している。


「早い……」

 銀の動きが、本来の定跡も早い。これは……


「新手だね」

 文人もぽつりとつぶやく。


"新手"


 これは定跡を覆す可能性がある未開の手が生まれた瞬間だ。プロ同士の対局なら、いまごろネットが大騒ぎになっていただろう。


 アマがたまたま指したくらいなら、新手とは言えない。それは偶然の産物であり、再現性もないものが多いからだ。しかし、今回、新手を指したのは、豊田政宗。つまり、研究の結果、産み出した神さまが残していた可能性だ。


 変な汗が出るのを感じた。俺は、大変なことを目撃している。定跡という常識が変わる瞬間。

 興奮と嫉妬。

 才能の違い。

 そして、将棋好きの血がうづく。


 嫉妬と一緒にもっと続きを見たいという純粋な好奇心。

 歪んだ気持ちが混ざり合い、俺は盤から目が離せなくなった。


 ここからは一方的な虐殺だった。

 

 ※


「また、ストレート負けやね」

「やっぱりうちらしか豊田は止められねえな」

「佐藤桂太と米山香を血祭りにあげて、てっぺん狙うしかないね」

「ねぇ、このセリフ負けフラグじゃない?」

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