第三百七十二話 決勝トーナメント
「うわー、またストレート勝ちだよ」
「圧倒的すぎるな、あの佐藤桂太と米山香の学校」
「地区大会がほとんど全国大会レベルみたいな県だからな、あそこも」
俺たちは、残念ながら昨日の予選敗退。今日は気楽に将棋の観戦旅行状態だ。
昨日から台風の目になっているのが、佐藤桂太たちだ。もともとレベルが高いC県予選を突破してきているし、去年、全国ベスト8の米山香、そして今年C県個人戦優勝の佐藤桂太のダブルエース制。C県の絶対王者で全国大会3位の山田が佐藤に飲み込まれて準決勝敗退というサプライズは、全国のアマチュア将棋愛好家たちを驚かせた。
予選から注目度マックスだったが、前評判通りの勝ち上がりだ。第四シードの栃木代表に圧勝し、予選を首位で通過。
俺たちが観戦していた決勝トーナメント1回戦も、2年連続で予選を突破している福岡県代表「不老水高校」をストレートで圧勝。
いまだに、1セットも落とさずに勝ち上がっているのは、あそこと今戦っている「教育大付属」だけだ。
もはや今回の大会はその二強を中心に回っていると言っても過言じゃない。順当にいけば、準決勝が事実上の決勝戦になる。
だが、佐藤たちの次の相手は、関西最強の名門校であり、名門校なのに曲者が集まる「西関高校」。まだ、準決勝進出を予想するのは早いだろうな。
「きたぞ。豊田政宗だあああああああああああああ」
「遂に決勝トーナメントで豊田をみれるぞ」
「いけええええええ、とよたあああああ」
大歓声が聞こえる。さすがは、アマの"英雄"であり、ポテンシャルは中学生棋士に匹敵すると言われている精密機械だ。
彼はつまらなさそうに席についた。
最強の男がついに動き出す。
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用語解説
「中学生棋士」……
中学生で、奨励会を突破し、プロ四段に到達した天才たちのこと。
現実世界では、加藤一二三九段・谷川浩司九段・羽生善治九段・渡辺明三冠・藤井聡太七段(2020.3.9現在の称号及び段位)が該当する。
加藤一二三九段は、若干18歳でトップリーグA級に昇進し、20歳で当時の序列1位名人位に挑戦するという偉業を成し遂げている。その後も、名人・十段という序列1位・2位を独占するなど大活躍し、棋士の最高齢記録も更新した。
谷川浩司九段は、加藤一二三名人から名人位を奪取。最年少名人という記録を持ち、全盛期は7冠のうち4冠を確保。永世十七世名人の資格を持つ。直近でも、将棋連盟の会長を務めたり活躍している。
羽生善治九段は、史上初めての7冠独占を果たした怪物。その後もタイトル保有数を伸ばし、棋界始まって以来の永世7冠をもつ。歴代最強議論でも、大山名人とともに人気を二分する。
渡辺明三冠は、羽生時代のなかで唯一羽生と互角に戦える棋士とも言われて、現在でも第一人者として活躍中。竜王・棋王の2つの永世位をもつ。
藤井聡太七段は、現在大活躍中。将棋のプロ連勝記録を約30年ぶりに塗り替え、加藤一二三九段が持っていた全棋士参加棋戦の最年少優勝記録を約六十年ぶりに塗り替えた。非公式のレーティングもトップクラスになっており今後の活躍も期待される。
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