表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
361/531

第三百六十一話 二人の決心

「部長たち遅いね」

「うん」

 私は葵ちゃんと椅子に座って兄さんたちの帰りを待っていた。文人先輩と先生は一足先に宿に向かっている。早めに、チェックインしてゆっくりするための手続きを済ませるためだ。


「かな恵ちゃんにはちゃんと言っておくね」

「えっ!?」

 このタイミングで私に話すこと…… もしかして、葵ちゃんと兄さんは……


「私、この前の合宿の夜」

「うん」

「センパイに告白したんだ」

「……」

 血が冷たくなっていくような気がする。地面がゆがんでいく。世界が終わってしまったような気分だ。


「でもね、ダメだったんだよ」

「ホント?」

「うん、ホント」

 その話に嬉しい気持ちを持つ自分の浅ましさが恥ずかしかった。なんて、嫌な女だろう。そう思う。

 だが気持ちは止まらない。


「私はだめだった。他に好きな人がいるって断られた。それが誰かは聞かなかったけどね」

「うん」

「かな恵ちゃんももっと素直になったほうがいいと思うよ。バカだよね、私。敵に塩を送ってる」

「ありがとう、葵ちゃん」

「どういたしまして」

 彼女は絞り出すようにそう言った。


「教えてあげたから、ひとつくらいお願いしてもいいよね?」

 葵ちゃんは声を震わせて言う。

「うん、何でも言って……」

 私も彼女の誠意にこたえたかった。


「勝とう。勝って勝って勝ちまくろう」

 彼女は涙をこらえて力強くそう言った。その姿はとても、とても気高かった。


「うん、勝つよ。私は、私たちは勝ちまくるよ」

 私はそう力こめて宣言する。もう、止まることはできない。止まってはいけない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ