表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
355/531

第三百五十五話 結論

「葵ちゃん、ありがとう」

 俺はなんとか言葉を紡ぎだす。最初はもちろん感謝だ。

 俺みたいな男を好きになってくれて、何度も何度も誠意をこめて教えてくれて、ありがとう。


「答え、教えてください」

 彼女は震えていた。そして、俺の答えは決まっていた。


「うん」

 俺は彼女の顔をまっすぐみつめる。






「ごめん、他に好きな子がいるんだ。だから、葵ちゃんの気持ちには、こたえられない」

 俺は正直に彼女に気持ちを伝える。


 静かに波音が迫ってくる。しばらく無言の時間が経過する。


「やっぱり、そうです、よね」

 葵ちゃんは、手を強く握りしめて、彼女は無理やり落ち着かせるような声でそう言った。


「うん」

「知ってました。でも、気持ちにうそ、つけなかったんです」

「ごめん」

「どうして、先輩が謝るんですか。謝らないでください」

「ごめん」


 また、無言の時間が流れる。


「先輩、私はこの数か月、先輩だけのために将棋を指してきました」

「えっ?」

「でも、今日でそれも終わりです」

「……」

「でもね、これだけはおぼえておいてください。私はできることなら、先輩のためだけに指したかったんですよ、これまでも、そして、これからも」

 彼女はすべてに満足した泣き顔で俺を見つめる。


「これで、全部、終わりです」

 彼女はそう言うと、少しだけ背伸びをして、俺たちの顔は近づく。


 俺たちは人生で二度とない経験を共有した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ