第三百五十二話 爆弾
さて、どうやってかな恵を部屋まで送り届けようか。完全に爆睡しているかな恵を起こすのは至難の業だ。ということは、抱きかかえたりして、部屋まで送らないといけないけど……いや、おんぶはまずい。なにがまずいかというといろんなものが当たるのだ。役得と割り切れるほど俺は大人じゃなかった。
なんとか紳士的に、かな恵を部屋まで送り届けなくてはいけない。そして、それを誰にもばれないようにしなくちゃいけない。まさに、ミッションインポッシブル。
「あの~桂太先輩?起きてますか?」
突然、外から声が聞こえた。葵ちゃんだ。
やばい、やばすぎる。
「起きてるよ。どうしたの」
片言になりながら、俺は何とか答えた。
「それがかな恵ちゃんが部屋から消えてしまって。心配なので、探しているんです」
やばああああああああああああああああああああああああああああああい。
「かな恵?それならいま、俺のベッドで寝てるよ」なんて口走ろうものなら、即死。もし、葵ちゃんが部屋に突入してきても即死。葵ちゃんをうまくごまかせても、かな恵を護送中に見つかっても即死。
どこの蛇だよ、こんなステルスアクションゲームみたいな状況。
なんとか誤魔化さなくてはいけない。どうする。
「かな恵なら、なんか気分転換に海風にあたってくるって言ってたよ。散歩するから、少し遅くなるって」
よしこれしかない。これが唯一のtrue endに向けた選択肢だ。
「あっ、そうなんですか。よかった」
うまくいった。これでごまかせたぞ。さあ、あとはかな恵を部屋に連れていくだけ……
「桂太先輩?じつは聞きたいことがあります。合宿の最後の夜、ふたりだけで会えませんか?」
「えっ」
「あのことです」
「うん、わかった」
また新しい爆弾が投下された。




