第三百五十一話 発覚
「ふう、すごいことになっちゃったな……」
かな恵なら、俺のベッドに寝ているよというすさまじく危険な状況だ。
間違いなくこの状況で、部員の誰かが部屋に来たら逮捕だ。
「反省はしている。だが、後悔はしていない、みたいなことでも言うしかないかな?」
そもそも、欠席裁判で有罪判決くらい覚悟しなくちゃいけないほど、危険な状況だ。
一応、葵ちゃん・部長はチョコレートのせいで睡眠中。
文人も疲れたと言っていたから、もうすぐ寝るだろう。
ならば、みんなが寝静まった時にかな恵を部屋まで送り届ける。
それが一番安全だ。
あと、2時間くらいしたら安心だろう。
だからこそ、ここはひたすら待つ。待つしかない。寝たらダメだ。起きれる自信が全くない。
そして、朝。
妹と同衾している鬼畜兄貴が出来上がる。
間違いなく死刑判決だ。社会的に……
旅行で疲れた体にこたえるが、ここで死ぬわけにはいかない。
なんとかして、意識をしっかり持とう。そうだ、旅行用に買っておいたコーヒーチョコでも食べて眠気を吹っ飛ばそう。そう思って、立ち上がった瞬間、何かが足に当たった。
ピンクのカバーに包まれたスマートフォン。
たぶん、かな恵のだ。服のポケットに入れておいたのが、さっきの騒動で落としたんだろう。
俺は、スマホを拾い上げた。
なぜか、画面のロックは解除されていて、将棋盤が表示されていた。
俺もよくやっている将棋倶楽部48の画面だった。
以前の対局の見直しでもしていたんだろう。
勉強熱心だな。
そう思って、画面上の名前を見る。
「えっ?」
そこには、驚くべき名前が表示されていた。
「<ta-ke>って、俺のアカウントじゃん。かな恵と知らず知らずのうちに対局していたのか?」
日付は春の日付だった。
悪いと思いつつ、かな恵のアカウント名も確認する。
「おいおい、嘘だろう?」
そこには、<kana_kana>という文字が表示されていた。




