第三百四十八話 激動の夜
「フー疲れたな」
俺は練習終わりの後、文人の部屋に来てお菓子を食べながらバカな話をしていた。
初日はとりあえず、練習9時間か。
午前中は移動時間もあったので、今日は少なめの練習量らしい。
高柳先生は本当に頭がおかしい。
「だって、将棋をやって肉体疲労しないだろう? 合宿中はとりあえず12時間を目安にがんばりたまえ」
などと供述していた。クレイジーだ。
「やばかったよな、今日の練習量……」
「ああ、詰将棋300問、次の一手300問、実戦無数……。終わった後は、用意しておいたPCに棋譜入力して、感想戦とかやばすぎる」
「まるで、鬼軍曹だよ」
「大会直前まで、練習量を増やして自分を追い詰める。大会前の2日間は軽めの調整で棋力を維持して、大会当日にピークをもってくる作戦だってな」
「最新のスポーツ科学を応用して考えてみたそうだよ。ハイテク産業バンザーイ」
疲れ果てて、チョコレートが美味しい。完全な糖分不足だ。
女子部員も女子会と称して、チョコパらしい。
ですよね~
あまりにつかれたから、修学旅行のように遅くまで起きることはできない。
俺は早めに個室に戻って、寝ようと扉を開けた。
暗闇からスッと手が伸びてきた。えっナニコレホラー?
その柔らかな手は俺に絡みつき、がっちりとホールドする。
やばい、逃げられない。もしかして、葵ちゃんの家のものが俺を消そうと刺客を……
「にいいさあああああああああああああああああああああん」
「って?! かな恵? どうして、俺の部屋に?」
「さびしくて来ちゃいました~」
彼女の手には、ウィスキーボンボンの包装紙が握られていた。
このオチ何度目だよっ!?




