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第三百四十六話 カレー③

<米山side>


(くそっ、完全にやられた)

 葵ちゃんが、この会場を選んだあたりから何かたくらみがあるのはわかっていた。

 だが、あえてアウェーで戦うことを選んだのだ。決して、会場を予約したりするのがめんどくさかったわけではない。


 でも、まさか葵ちゃんがこんなに早く動くなんて思わなかった。完全に後れを取った。

 葵ちゃんの巧妙な作戦だ。合宿初日から、私たちに心理的なマウントを取るための積極策だ。

 さすがは試合巧者で負けず嫌いな葵ちゃんらしい作戦。


 何か対抗策は……

 ひたすら頭で計算するのだけど、なにかが邪魔をする。

 それは美味しいカレーだった。


 野菜がしっかり煮込まれた美味しいカレー。

 野菜特有の柔らかな甘みに、私の勝負師としての牙は抜かれてしまう。

 このカレーの優しい味も、私たちの戦意を折るための巧妙な罠のはず……

 くっ、まさかここまでとはな……


 私は、某探偵マンガの赤い人の名言を心の中で反芻した。


――――――――――――――


 まさか、ここまで(読んでいた)とはな……


――――――――――――――


 私は、悔しさと称賛の意をこめて葵ちゃんのことをみつめた。

 葵ちゃんはどや顔でこう言ったように思えた。


――――――――――――――


 私も驚きましたよ。こんなにうまくいくなんて


――――――――――――――


 やはり、最強のライバルは"葵"ちゃんか……

 合宿冒頭で、いきなりこんなボディーブローを打ってくるとは思わなかったわ。どうにかして挽回しないと・・・・・・


 でも、やっぱりカレーは美味しい。

 お代わりもらっちゃおうかな? 美味しいは正義。ここは戦略的撤退、もとい、転進を選んでもいいかもしれない。だって、カレー美味しいんだもん。


「ねぇ、葵ちゃん?」

「なんですか? 部長?」

 ダメだ、これ以上はいけない。取りこまれる。

 私の理性が必死にブレーキをかけるが、もう欲望は止められない。


「私もお代わりもらってもいいかな?」

 まさに投了宣言だ。屈辱だけど、食べちゃう。


 歴代名人だって、大事な対局中はカレーを食べてるし、今日のタイトル戦のお昼ご飯も陣〇カレーだし、しかたないのよ。


 これは負けじゃない。

 必死に言い訳しながら、私は空腹に負けた……

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