第三百三十九話 女たちの夜
かな恵side
「……」
「……」
「……」
ここは、合宿前日の私の部屋。
スマホの音声通話アプリを使って、私・部長・葵ちゃんの3人はテレビ通話をしていた。
そう、修羅場である……
最初は、合宿に持っていくものの打ち合わせだったはずなんだけど。
いつのまにか、兄さんの話になって……葵ちゃんと部長が険悪な雰囲気に……
そして、悪魔の女子会へと変貌してしまった。
「まさか、葵ちゃんがこんなに早く動くなんて、思わなかったわ」
「部長がさきに戦端を開いたから、私も参戦しなくちゃいけなくなっちゃったんじゃないですか」
「まるで、私のせいのように言うわね」
「すくなくとも、きっかけじゃないですか」
「たしかにそうね。反省はしているわ。でも、後悔はしていない」
「などと供述しており、部員一同は余罪がないかどうか調べている」
「余罪ってなによ?」
「最高の告白シチュエーションを用意するために、部員たちも騙していましたよね?」
「うっ……」
なんか、ハーレムラノベでよく見るような修羅場になってきてるですが……
「あのぅ」
私はなんとか雰囲気を変えようとして二人に声をかける。
「そんなこと言ったら、葵ちゃんもでしょ」
「な、なんですか……」
「隠れて、桂太くんとデートしてるでしょ。知ってるんだからね」
「どうして、それを……」
「仲良く二人で歩いて、ドライブデートを楽しんでいる目撃証言が多数報告されているわ」
「ぐぬぬ」
よし、チャンスだ。お互いに痛み分けになっているから、ここらへんで和解させなくちゃ。
私はあえて火中の栗を拾う。
「まあまあ、ふたりとも、明日は楽しい楽しい合宿ですし……」
「なに部外者面しているのよ、かな恵ちゃん?」
「部長の言うとおりだよ、かな恵ちゃん!」
今まで喧嘩していたふたりが急に手を組んで攻めてきた。
待って、この流れはおかしい。
「将棋に待ったはないわ」
いや部長、あなたはエスパーですか。
「そうだよ、かな恵ちゃん。いい機会だからはっきりさせておこうよ」
「な、なにを……?」
「「桂太くん(センパイ)のこと、ホントはどう思っているの?」」
自分の顔が熱くなる。だけど、私はこの質問から、逃げる術を知っている。
「兄さんは、大事な家族で……」
「そう言うことを言ってるわけじゃないって、わかってるでしょ」
部長は、私の言い訳を簡単にへし折る。
「おとこの人、異性って意味でどう思ってるのかだよ?かな恵ちゃん!」
ふたりは、さらに厳しい追及をしてくる。私は決心を固めて、答えた。
「……が7割、……が3割」
私は、”彼”をどう思っているのか割合で答えた……




