表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
331/531

第三百三十一話 ふつう

<葵side>


 先輩をむりやり私の家に誘った。

 おじいちゃんと共謀して、私は先輩を罠にはめたのだ。

 いや、先輩だけじゃない。


 私は、部長もかな恵ちゃんも罠にはめたのだ。

 誰もが予想していない時を狙って、先輩に対して奇襲をかける。


 まあ、部長だって私たちに奇襲をかけたのだから恨みっこなしだ。

 かな恵ちゃんは……


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 でも、これは将棋と同じ真剣勝負。

 手を抜いたら間違いなくライバルたちに負けてしまう。だから、ここで手を緩めてはいけない。

 一気に攻め切らなくちゃ、私は負けてしまう。


 かな恵ちゃんに聞いた。部長は、特別な日に、特別な時間、特別な場所で、先輩に気持ちを告げたようだ。あの大会の余熱にうなされて、ふたりだけの決勝戦を堪能したあの日に、ふたりきりの公園で告白した。部長が先輩にどのような気持ちを抱いているのかがよくわかる。


 部長にとって、桂太先輩は特別だったんだと思う。

 自分の将棋だけしかなかった人生に現れた白馬の王子様。

 悩みながらも自分を新しい場所に連れていってくれる救世主。


 だから、特別なんだ。

 部長にとって、桂太先輩は……


 でも、私にとっての桂太先輩は違う。

 私にとって、桂太先輩は普通の延長線上にある優しい人。


 今後は、常に一緒に歩いていきたい人。

 変な冗談で一緒に笑い合って、たまに楽しく詰将棋をしたり、勝ったり負けたり将棋を指す。

 たまに、一緒に勉強したりして、普通の、でもたまに特別な高校生活を一緒に送りたい大切な存在。


 部長が求めている桂太先輩の理想像とはまた、真逆にあるのが私の桂太先輩像なんだ。

 だから、私は特別な場所で告白はしない。

 いつもの私を見てもらう。

 それをしなければ、私が目指す二人の関係にはなれないから……


 普通に私の家で遊んで、普通に一緒に料理をして、楽しい夕食を食べる。

 それが私が目指す先輩との目的地。

 だから、わたしはこのロマンスもあまりない状況で、人生はじめての告白をする。


 それが私たちの理想像だから。


 玉ねぎのせいか、少しだけ目が潤む。


「でも、俺これなら手伝うことないよね」

 先輩が私のことを褒めてくれた。それがどうしようもなく嬉しかった。

「ああ、それは先輩と二人で話をしたかったからです」

 ついに告白の終盤戦。私は一気に寄せの形をつくった。

「えっ」

 先輩は奇襲攻撃で、陣形のバランスを崩す。

 私はチャンスを逃さない。


「いつもの私を見てほしかったんです。なにも飾らないいつも通りの私を……」

「どういうこと?」

 本当にどんかんな主人公だ。将棋の盤上ではあんなに勘が鋭いのに……


「私が先輩を好きだと言ったらどうしますか?」

「それは……」

 部活の先輩として? それとも男として?

 先輩ならそう聞くに決まっている。


「もちろん、異性として、です」

 私は強く断言した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 葵ちゃんの立ち位置が見事に描かれていて納得しました。 こんなにはっきりと好きな人とどんな将来を目指すかわかっているなんて流石葵ちゃんです。終盤の王者。 ますます目が離せません!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ