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第三百二十七話 宣戦布告

米山side


「ふうううう、緊張した。っていうか、気まずくて、桂太くんの顔を直視できないよ~」

 とりあえず、部員たちが帰ったのを見計らって私は弱音を吐く。人生初の告白をして、返事を保留中の相手といつも顔を合わせなくちゃいけないのがこんなにも高難易度とは思わなかった。普通に気まずい。


 今回は合宿の予定を話すために無理なハイテンションでしのぎきったが、次回はどうしようか。少し気持ちが重くなる。やっぱり、あのタイミングでするべきじゃなかった。もう少し落ち着いてからするべきだった。


 内心ですさまじく反省しつつも、私はちょっとだけ誇らしかった。だって、理由をつけて自分の気持ちから逃げなかったのだから。


「反省はしている。だが、後悔はしていないわ」

 などとひとりで供述しながら、私は部室の戸締りをして外に出る。扉を開けたとき、夕日を背にひとりの後輩が立っていた。


「待っていました、部長…… 今日は一緒に帰りませんか?校門前に車を待たせているんですよ~」

 ちょっと邪悪な笑顔で葵ちゃんは私を待っていた。


「じゃあ、いきましょう~ ぶ・ち・ょ・う」

 拒否権はもちえていないようだ。

 私は彼女の黒塗りの車に導かれた。


「すいません。強引に呼び止めて」

 葵ちゃんは私に対して一応、謝罪する。でも、悪びれてはいないようだ。


 ごめん、みんな。私、死んだ。


「そんな怖がらないでくださいよ。まるで、桂太先輩みたいな反応ですけど」

「どうして、彼の名前を強調するの?」

 というか、桂太くんもこんな修羅場経験しているのか。葵ちゃんって、やっぱり怖い。


「単刀直入に言いますね。部長。桂太先輩となにかありました?」

「……」

「言いたくなければ、大丈夫です。でも、今日の二人の感じがいつもと違った感じがして…… ちょっとそれが心配だったんです」

「葵ちゃん……」

 彼女もやっぱりいろいろと心配してくれているんだな。そう思うと嬉しい。


「もしかして…… 部長?桂太先輩に告白とかしちゃいました?例えば、誰もいない夜の公園とかで……」

「……」

 どうして、知ってるのおおおおおおおおお。

 なに、葵ちゃんやっぱり怖い。


「ごめんなさい。実は、昨日の帰り見ちゃったんです。ふたりが公園であっているところ」

「ああ、そう」

 私はそう言ってごまかそうとした。でも、彼女は私をまっすぐ見つめて誠実に宣言した。

「部長、私も桂太先輩が好きです。だから、負けたくありません。部長、私も本気をだしますから、ね」

 そう言って、私の最愛の後輩は、わたしに向かって正々堂々と戦うことを宣言した。

 

 私は奇襲に失敗したようだ。

 やっぱり、かな恵ちゃんのようにうまくはいかない、か。

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