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第三百二十四話 祭の後

「おはよう、かな恵」

「おはようございます、兄さん」

「どうしたんだ、すごく眠そうだな」

「実は昨日、大会で興奮したせいか、眠れなかったんです」

「ああ、わかる。俺もちょっと寝不足」

「兄さんもですか~私は諦めて、ネット対局をはじめたら250手でも決着がつかない泥沼の戦場になっちゃって」

「うわ~、250手とか……お互いに入玉したけど、勝負がつかなくて泥沼か~なんの戦法を使ったんだ?嬉野流?」

「えーっと、まあそんな感じです。ちなみに、戦型は「相筋違い角」でした」

「うわっ、凄まじい力戦だな。相筋違い角って、本出版されてたっけ?」

「この前、出版された本が一冊だけあります。他のはみんな絶版になっちゃいました」

「ははは」

 大会が終わった夜に、ネット将棋でそんな力戦形を使うかな恵の勉強熱心さと変態性に色々と複雑な気持ちになる。


 俺も頑張らなくちゃいけない。

 とりあえず、ポジティブな気持ちに変換した。

 有名なサッカー選手の物まねをしている人も言っていたけど、とりあえずポジティブにとらえることが重要だ。


「そういえば、ぶ……」

「えっ!?」

「部活は今日は軽めの練習ですよね。終わったら、食料品の買い出し一緒にいきませんか?」

「ああ、()()()()()()。行こう、行こう」

「それから、よね……」

「うおおおおおおおおおおお」

「どうしたんですか?! さっきから? よね、じゃなかった。お米を買いたかったんで、荷物持ちお願いしますね」

「ハイ、ヨロコンデー」

 なんか、さっきから俺のことをもてあそんでないかな。かな恵?

 言い間違いだよね。きっと、そうだよね。なんか、女子力的ななにかで、昨日の夜のこと全部バレてないよね。そんな、オカルトありえませんよね。


「それよりも、朝ご飯早く食べないと、遅刻しますよ? じゃあ、私は先に学校に行ってますね」

 かな恵は少しだけ怒ったような口調だった。


「なんだよ、昨日からあああああああああああああああああ」

 俺は、ひとりで朝食のトーストをかじりつく。

 ちょっと焦げた先っぽがとてつもなく苦く感じた。


 ※


 その後、全校集会での表彰とか普通の授業とかを適当にやり過ごし、なんとか放課後を迎えた。

「正直、学校どころじゃなかった」

 だって、そうだろう?

 昨日の大会の興奮。部長からの告白の衝撃。そして、彼女とどう話せばいいのか分からない不安。

 いろんな気持ちがごちゃ混ぜになって、学校どころじゃなかった。


 そして、俺は部室の前に立ち、部屋の扉を開いた。

 中には、文人と葵ちゃんがいた。


 部長は、まだ来ていないようだ。ちょっと安心する。

 適当にふたりと話をして、部長たちを待つ。


 そして、彼女はやってきた。

 元気よく、扉を開けた彼女は、はっきり断言した。


「みんな、昨日はお疲れ様! そこで提案なんだけど、合宿しない?」

 

 どうして、こうなった……

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