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第二百九十八話 新時代

 その瞬間、歴史は変わってしまった。

 山田・米山の2強時代。

 自分でいうのも恥ずかしいけど、この三年間はそう呼ばれていた、

 そう、今日までは、この大会は私たちのためのものだった。

 でも、今、歴史は変わってしまった。


 新時代の到来を告げた彼は、安心したようにため息をついて、ぼーっと盤を眺めている。

 敗れた山田君もどこか満足気だ、


 私を含めて、観客たちはその様子をただ、見ていることしかできなかった。

 歴史が変わる瞬間を、冷静にそうだとは認識できていなかったのだ。ただ、熱にうなされて、その様子を見ていることしかできなかった。

 そして、その瞬間をただ冷たく見ていることしかできなかった。


 山田くんが、投了のために頭を下げたとき、会場は熱を伴いながらも、騒然とした無言の世界が生まれたのだ。

 その状態は、数十秒間続いた。

 どうして、誰も声を出さなかったんだろう。

 たぶん、何か発してしまえば、いままで浸っていた世界が壊れてしまうことが壊れてしまうかもしれないと思ったのかもしれない。

 それほどまで、私たちは二人の戦いに魅せられていた。


 この瞬間が永遠に続けばいいのに。

 素晴らしい将棋を見ているとき、私はいつもそんな気持ちになる。今回も、もちろんそうなった。

 独創的な序盤から、お互いに有利になろうとする中盤戦、そして、最後のねじりあい。

 おもしろい将棋だった。ふたりとも、すべてを出し尽くした顔をしている。


 これで、私の当初の目的の半分が達成できた。

 桂太くんを決勝戦に進出させることだ。

 そして、もうひとつは……


 私も勝ち進んで、彼と決勝を戦うこと。

 いよいよ、私自身の準決勝がはじまる。相手は、恋愛面においても最強のライバルとなっている「かな恵ちゃん」だ。

 でも、ここで負けるわけにはいかない。


 次の将棋は、盤上における私たちの代理戦争で、最終戦争みたいなものだ。

 すべてを尽くして、私はこのハルマゲドンを勝利する。


 天衣無縫。かな恵ちゃんの将棋をいかに打ち破るか。私は、考えていた秘策を披露するときがついに来たのだ。


――――――――――――――――――――

ミニコラム

昨日の盤面について


昨日の終盤の盤面ですが、以下のような手順で詰みとなります。

▲8五歩 △同 角 ▲同 金 △9三玉 ▲8二角 △9二玉

▲9一角成 △同 玉 ▲8二金


ちょっと、無理をして盤面を作ってしまったので、反省しているところですが今後も頑張って作っていくので温かく見守ってもらえると嬉しいです。

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