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第二百九十一話 進化

 山田さんの猛攻が始まった。受けの陣形を作って、得意の攻撃も組み合わせる。山田さんの棋譜は何度も並べたがこんな風に指しているときはなかったはずだ。この難しい陣形のバランスで、さらにリスクが高くなる攻撃をしてくる。将棋は他のボードゲームと違って、取った駒を自分で再活用できる。だから、攻撃はリスクと隣合わせだ。もし攻撃が失敗したら、相手に自分の戦力を渡してしまうのだ。勝算がなければ、踏み切ることはできない。つまり、山田さんはどこかの変化に勝算があると判断しているのだ。


 一見、俺が有利だと思う。

 攻撃力こそ劣っているが、陣形のバランス・高位置・相対的に高い守備力を確保できている分、俺が有利なはずだ。


 だが、一番のネックはここまで山田さんの土俵のなかでしか勝負できていないことだ。

 完全に相手の術中にはまってしまったことになる。

 ここまでの展開では、常に後手後手に回ってしまっている。


 だからこそ、ここでは俺から主導権を握りに行きたい。

 思考のスピードがドンドン加速していく。


 歩を動かすと敵の飛車の攻撃が王の直前に迫る。

 なら、相手の攻撃がはじまるまえに、どこかでカウンターを狙うか。

 それとも、相手の攻撃は無理筋だと判断して受けきるか。

 お互いに攻め合う将棋を目指すか。一手差勝ちの勝負だと、ミスは許されない。だからこそ、深い盤上理解が必要になってくる。


 今まで一番早く加速した時は、葵ちゃんとの練習対局だった。


 でも、今はもっと早くなれる。

 いや、早くなっている。そして、今まで以上に深くなっている。

 その確信があった。

 たぶん、最高の舞台で、最高の強敵が前にいてくれるおかげだ。


 前に進みたい理由だってある。


 女の子に、大事な女の子たちに、少しでもカッコイイところをみせるっていう大事な理由がある。

 恩人と決勝戦で戦いたいという願いもある。

 大事な妹に、この前の大会ではなさけないところを見せてしまったから、そのリベンジをしたい気持ちもある。


 そして、大舞台で、最高の将棋を楽しみたい。

 それがおれを突き動かしていく。

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