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第二百七十七話 決着

 葵ちゃんは、こういう人間的な将棋の対極にいる棋風だ。

 彼女の終盤は 私はあえて自分の詰みを見逃して、葵ちゃんの玉に迫った。

 この状況では、守っても次の手で必死が発生してしまうので、私に勝ち目はなくなる。

 ならば、一世一代の大博打にうってでるしかない。


 彼女の終盤は、綺麗すぎるのだ。そして、みんなは彼女の終盤の美しさに目を奪われて、敗れていく。

 なら、逆の立場で戦ってみたらどうなるのだろうか。


 つまりは、切り合いに行かないで、泥臭く相手を惑わせていく。

 部長の終盤を真似したら……

 私に部長程の腕力はないけど、変態将棋ならば負けないつもりだ。

 もしかしたら……

 彼女のスマートな将棋を惑わせることができるかもしれない。

 そして、経験値勝ちを狙うのだ。変態将棋ならば、私の方が勝る。そこで負けてしまえば、私が葵ちゃんに勝てるところはなくなってしまう。


 私は、はったりの自信満々な表情を浮かべて次の一手を指した。

 葵ちゃん、あなたの考えている詰み手順にはひとつ致命的な誤りがあるのよ。

 盤上で私はそう言ったのだ。


 葵ちゃんの表情に悩みが浮かび上がった。

 今までの対局は、毎回切り合いだった。だから、自分の読みは直線的でよく、葵ちゃんの実力と才能は十分に発揮された。

 しかし、この複雑な局面では、曲線的な思考が必要になる。

 

 葵ちゃんの次の一手の着手に時間がかかっている。

 私は自分への宣告をひたすら待った……


 ※


「いや~すごかったな。今回の大会は波乱多すぎだよな」

「そうそう。前回のベスト4の半数がもう負けちゃったもんな」

 ついにベスト4全員が出そろった。

 観客たちは、ワイワイと無責任なことを言っている。

 俺は、部長たち3人の将棋が終わってやっと水を飲めるくらいに回復したのに……


 部長の将棋は圧巻だった。

 一瞬の疑問手を見逃さないで、、山瀬さんを粉砕していた。終盤はワンサイドゲームだった。

 

 そして、葵ちゃんとかな恵は……


「これでベスト4は、山田と、米山香、佐藤桂太……」

 観客たちは、復習がてら名前を挙げていた。


「あと、()()()()()。あの子、佐藤桂太の妹だろ? 全然似てないけど」


 そう、かな恵が勝ったのだ。

 必敗の将棋をひっくり返し、大逆転の末に、かな恵は全国への切符を手にいれた。


 本当に凄い将棋だった。

 勝負手に力と気持ちが乗せられていたのが観戦していただけでもわかる。


「俺の妹がこんなに強いわけがない」

 俺は本音を口にした。

 ついに準決勝が始まる。


 俺は絶対王者との対局を前に精神を集中させる。


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