第二百七十六話 つながり
私は必死に考えて、答えを紡いだ。
私が、何年間も目をそらし続けていた答えは、封印が解かれた妖怪のように出現した。やっと見つけることができたそれは、早く自由に成りたいと私に語りかける。
「うん、いいよ」
私は自分の本心と向き合う。
もう何も怖くなくなった。勇気さえ出してしまえば、あとは怖くないんだ。
ごめんね、今まで意地を張ってきて、ごめんね。
私は、紡いだ言葉に何度も謝罪する。それは将棋に向けられた言葉であるとともに、お父さんや兄さん、そして部活のみんなに向けられていた。
みんな、本当にごめんね。
そして、「ありがとう」
私は、気分を落ち着かせると、幻の兄さんに向かって見つけた真実を素直に告白する。
もう私は逃げないと宣言するために……
「つながり、だから……」
「それは、どういうこと?」
「お父さんとの、部活のみんなとのつながり。私にとっては、みんなと過ごした時間、紡いだ棋譜。それが私の中では大事な写真がつまったアルバムみたいに、なっているの。だから、将棋は続けたい……」
「やっと、正直になったな」
「うん」
「じゃあさ、葵ちゃんには無くて、かな恵にはあるもので戦ってみろよ」
「それって……」
「いままでたくさん撮ってきた思い出だよ」
「うん」
私は、もう一度盤面をのぞきこむ。
状況は葵ちゃんに完全に寄せきられる寸前だった。
ここでなにかしなければ私の負け。
だから、なんとかしなくてはいけない。
そして、わかったのだ。
私が最善手を指し続ける必要はないのだ。
葵ちゃんに最善手を指させなければ大丈夫なんだから。
私は、奇襲戦法の研究で身につけた怪しい一手を打ちこんだ。
葵ちゃんは、常に最善手を考えて行動している。
だから、直線的な思考になりやすい。
そして、実戦慣れしていないから、こういう怪しい一手の対処法ははたして完璧なのだろうか?
私は、疑問を確かめるために、次の一手を打ちこんだ。
葵ちゃんの表情が少しだけ崩れたのを私は見逃さなかった。




