表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

262/531

第二百六十二話 憎しみに打ち勝つ②

 私は兄さんの将棋を見ていた。

 兄さんは本当に楽しそうに将棋をしている。

 そんなに簡単な盤面じゃないのに。


 複雑に入り組んだその盤面を兄さんは楽しんでいた。

 もう持ち時間もほとんどないのに、どこまで読めているのだろうか。ほとんど、悪手や疑問手を自分では見つけることができなかった。


 橋田さんは、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 もう、どっちが格上なのか分からない状態だった。


 もうひとつの準々決勝は山田さんが圧勝し、終わっていたので、観客たちは兄さんの対局を見つめている。そして、みんなが見とれていた。兄さんの圧倒的な読みに……

 将棋を知っている人なら、この対局に見とれないひとはいないんじゃないだろうか。

 歩を置く位置は、1()0()()()()()()()()()()()、寄せに効果を発揮していた。

 何気なく動いたように見えた桂馬は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……


 取ったら、即詰み。

 たぶん、葵ちゃんクラスじゃいないと気がつかない罠だ。

 私も一切わからなかった。橋田さんも、それに気がつかないで、時間に追われて取ってしまった。

 そして、流れるような13手詰の即詰み。

 対局者も観戦者もすべてをおきざりにする手順だった。


 その圧倒的な深さを持った読みを披露した兄さんは微笑んでいた。

 あの冷たくて鋭利な手順を見せた後の顔だと思えないほど……


 ()()()()()()()()()()()()()

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 橋田さんは、投了を宣言する。

 私を含めてみんなは、その様子を呆然と見ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ