表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

259/531

第二百五十九話 死闘

 俺が、先手となった。

 角道を止めて、矢倉へと誘導する。これに対して、橋田さんはちょっと気難しそうな顔になった。もう、矢倉か雁木しか選べない状況になったからだ。


 彼の得意戦法は、角換わりか横歩取り。

 しかし、この出だしでは、どちらも選択できない。だから、橋田さんは苦々しい顔になりながら、矢倉の戦法を採用していく。


 今回はさきほどの対局とは違って、古風な定跡になりそうだった。

 1980年代に流行した形だ。


 当時はまさに、矢倉戦法の全盛期。プロの大事な試合は、ほとんどが矢倉だった時代だ。将棋の純文学の全盛期の定跡を俺たちはなぞっていく。橋田さんも、どちらかというと古風な定跡を好む人だ。俺も今回の大会のために、部長から「矢倉名局集」を借りて過去の定跡を総復習した。


 あの本には、1980年代の定跡もたくさん詰まっていたのだ。古い定跡は、なにか問題があって、消えていくことが多い。ただ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。だから、今回の大会ではあえて古い定跡を使っている。


「ずいぶん、古風な組み方をしているな」

「橋田さんこそ、この古い定跡を(とが)めなくていいんですか?」

「減らず口だな」

「実は、咎め方を知らないんじゃないんですか?」

「いいんだよ。俺は、ドヤ顔で固めた矢倉を潰すのがすきなんだからな」

 橋田さんは、口が悪いが、その反面、態度に出やすい。この様子をみて、俺は自分の仮説が正しいことを確信した。


 橋田さんにもこの戦術は通用する。だから、大丈夫。

 この安心感が俺の思考をトップスピードまでかけ上げる。

 俺が目指すのは完全なる勝利。ただひとつ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ