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第二百五十一話 因縁

 俺たちの対局は、彼女の宣言通り「矢倉vs雁木」となった。

 俺が後手で矢倉、彼女が先手で雁木。


挿絵(By みてみん)


 雁木は今やプロ・アマ問わず大流行している形だ。

 矢倉は、縦からの攻撃に強く、横からの攻撃にやや弱い。いくつもの攻撃方法が確立されていてバランスが取れている戦法だ。矢倉は古来より使われて、チューニングされてきた攻防隙が無いバランスのとれた戦法なのである。唯一の欠点は、()()()使()()()()()()()。これがプロでも問題視されて、一気に数を減らしたのだ。


 対して、雁木は「尖った」戦法である。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。総合的な防御力は矢倉に劣るものの、その最大の特徴は攻撃力だ。矢倉とは違って、バランスが取れた陣形から、全ての駒が使いやすく、全駒が躍動する将棋になりやすい。その圧倒的な攻撃力はとても魅力的で、従来の矢倉はそれによって数が激減した。ただ、矢倉がそれをもって雁木よりも下になったとは俺には思えない。専門家たちによって江戸時代から指されていた形がついに日の目を見たのだ。


 ソフトという文明の利器が古い戦法に新しい息を吹き込む。だから、将棋は面白い。


 だが、雁木によって矢倉が滅んだという考えには納得できていない。そもそも、矢倉の数を激減させたのは、雁木だけが理由じゃないのだ。


「ねえ、中曽根さん。キミは、雁木が矢倉を駆逐したと思っているんだろうけど、それは修正させてもらいたいな」

「はぁ?」

「矢倉は、雁木以外にも急戦矢倉という矢倉戦法の一種の発展で数が減ったんだ。矢倉は矢倉とも、戦っている」

「何が言いたいんですか?」

「つまりね、」


()()()()()()()()

 俺は、雁木からの攻撃を待った。受け潰す構えだ。


――――――――――――――――――――――――――――

人物紹介

中曽根智美……

西田東高校1年生。部内では最強の実力者。

攻め将棋であり、勝気な女の子。

矢倉絶滅信者であり、矢倉つぶしに全力を傾ける。

好きな将棋用語は「矢倉は終わった」


作者注釈

画像の後手は矢倉ですが、王を入城させていません。

これは技術的な話になってしまうので、読み飛ばしてもらっても構わないのですが、雁木vs矢倉だと敵の攻撃が集中するルートにあえて飛び込まないように王を入城させないことが多いことや、雁木の攻めが早いので物理的に入城できないことが関係しています。

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