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第二百四十九話 ふたり

「桂太……」

「よっ」

 俺は親友を迎えに行った。満身創痍(まんしんそうい)の文人は、俺を見て力なく笑うことしかできていなかった。その様子は、本当に灰のように真っ白な無念が積み重なっているように見えた。


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「まだ、早えよ。これが最後の大会じゃないんだからさ」

「少しくらい感慨にひたらせろよな」

「そんな暇があるなら、俺を応援してくれ」

「悪いな。準決勝で会うつもりだったのに」

「いいよ。ほとんど切符まで買えていたのにな。惜しかったな」

「慰めつつ、傷をえぐるなよ~」

「わりい」


「でも、本当にすごい気持ちが入った将棋だったよ。あの山田さん相手に一歩もひかずに終盤まで圧倒していたじゃないか」

「でも、勝てなかった」

「そりゃあ、そうだけど……」

「あと一歩のところで負けたのは、今まで逃げてきたからだと思うんだ。そのツケが今頃まわってきたのかもな」

「逃げた?」

「そう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「……」

「でも、いい自信になった。俺だって結構できるんだぞってな。あの県最強の山田さんをあと一歩まで追い込んだんだ。次の大会までには、桂太を超えてるかもよ」

「調子に乗るなよ」

「いいじゃないか。少しくらいは調子に乗ったって」

「顔が全然、調子に乗れていないけどな……」

「あんまり、本当のことを言うなよ」

 俺たちはまた笑った。


「桂太、頼む俺の仇をとってくれよ」

「ああ、わかってるよ。俺は今日、優勝しなくちゃいけないんだよ」

「がんばれ、桂太。お前がナンバーワンだ」

「どうしてドラゴンボ〇ルネタ?」

「おもしろいだろ?」

「じゃあ、俺も行ってくる。次勝てば、ベスト8だからな」

「ああ、頼むぞ」

 俺はうなづいて、3回戦に向かった。

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