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第二百三十七話 理想と現実

挿絵(By みてみん)


これが将棋の王道として、何十年もの間、戦法の中の頂点に君臨していた矢倉「4六銀3七桂馬」戦法の基本図だ。しかし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 将棋の世界に革命が起こったのだ。

 人工知能AIという新しい可能性によって。


 この基本図が完成する1手前に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。人間が何十年も考えて使い続けていたその定跡が、根幹から崩れ去った瞬間である。


 それがこの一手だ。


挿絵(By みてみん)


 桂馬が跳ねる一手前に、歩が銀の前にくるだけ。この一手によって、人間の叡智(えいち)が、コンピュータによって敗北したのである。これは元々あった考え方の一つではあったのだが、人間の研究では無理筋と考えられていた。しかし、AIの圧倒的な演算力は、その無理を可能に変えてしまったのだ。


 当時、プロ棋士が次々とコンピュータに敗れていたのと、この一手の革新は将棋の新しい時代を象徴していた。


 この王座陥落と、その後に続く将棋戦法の革新から、将棋の新しい時代ははじまったのかもしれない。

 そして、こういう言葉が生まれたのだった。


()()()()()()()


 こうして、俺の得意戦法は消えたのだった。

 しかし、俺はいまだにこの戦法を愛用していた。捨てるには、惜しい人間の叡智にすがっているだけなのかもしれない。だが、俺の将棋人生とともに歩んできたこの戦法を捨てたくもなかったのだ。


 コンピュータだとか、周りの風評とかそんなことは気にしていない。

 俺はアマチュアだ。だから、好きにやる。特にこれは俺だけの責任になる個人戦だ。


 かな恵のために、負けるわけにはいかない。だからこそ、俺はこの戦法にかけるのだ。

 俺と共に歩んでくれたこの戦法を使って、頂点まで駆け上がる。


 そうすることで、彼女にも違った地平を見せることができる。

 さあ、どうしますか、幸田さん? 俺はすべてを対局者に委ねる。

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