第二百三十五話 二回戦
とにかく、みんな無事に二回戦まで駒を進めることができた。
おれも二回戦の会場へと向かった。
今回の相手は、千城高校の3年生だ。残念ながら、団体戦ではスタメン落ちしてしまったひとなので、ほとんどデータはなかった。ただ、あの高校で、3年生まで将棋を続けている人だ。普通に考えて、かなりの実力だと思われる。
おれは警戒しながら、席へとついた。
「佐藤桂太さんだね」
「はい」
「今日はよろしく頼むよ」
「こちらこそよろしくお願いします」
相手の幸田さんは、紳士的なひとだった。かなり、落ち着いているように見える。おれと一歳しか変わらないのに、どうしてこんなに落ち着いているのだろう。
「キミには、昨日、とてもお世話になったからね」
「はい?」
「今日は借りを返せるように、頑張らせていただく」
紳士的な態度が逆にこえええええええ。
なんか、反社会的勢力の代打ちみたいな雰囲気を感じるよ。
今、真剣師は絶滅してるはずなのに、幸田さんからはそんな危険なにおいがしてくる。
でも、
「俺も負けるわけにはいかないんです」
「おもしろいな、キミは」
幸田さんは、自信満々に笑った。なんか雰囲気がアラサー以上なんだけど。このひと本当に高校生?
もしかして、もう成人してるんじゃないだろうか。
なんか怖いので、詳しくは考えないでおこう。
おれたちは駒を並べはじめた。
※
将棋の内容は、相居飛車になった。
そう言えば、大きな試合で相居飛車になったのは久しぶりだ。
アマチュア同士の対局では、居飛車vs振り飛車の対抗形になることが多い。
対抗形こそが、アマチュアの花形みたいな雰囲気が蔓延している。
なぜ、相居飛車がアマチュアで避けられるのかと言うと、非常に難しいからだ。プロ間では、相居飛車が主流のため、定跡の進歩がすさまじい。そのため、歩の位置ひとつ違うだけで結論が180度違ったりするのだ。
そのため、難しすぎるのでアマチュアからは敬遠されるのだ。
今回は、相矢倉という形になった。




