第二百二十七話 夕食&次章予告
「兄さん、決勝戦の最終局すごかったです」
「ありがとう」
「劣勢だったところから、一気に大逆転。本当に凄かった」
「かな恵や部長のために、勝ちたいって思ったから」
「そう、ですか」
俺たちは駅前の安いイタリアチェーン店で夕食を食べる。
俺は、ドリアを、かな恵はトマトパスタを食べていた。そう言えば市民大会の後の打ち上げもここだった。あの時はおれがかな恵に負けて、優勝を逃したんだっけ。
「わたし、今回の大会で自信を失いました」
「いや、でも対戦相手、みんな強い人たちだったし」
「そんなのは言い訳です。兄さんや葵ちゃんはもっと強い相手を倒していました。今回の大会では、いちばん足を引っ張っていたのは、私です」
「そんなこと……」
「変な慰めはいりません」
「いや、」
「率直に聞きます。兄さん、私が明日、葵ちゃんと戦ったら勝てると思いますか?」
「……」
答えることができなかった。明日の個人戦、かな恵は葵ちゃんとうまくいけば準々決勝で激突する。その時、どちらが勝つ確率が高いか……
本人の前で言えるわけがない。
「その沈黙が答えですよね」
かな恵は目からハイライトが消えている。そこにはあるのは、深い絶望だ。
「気にしないでください。自分でも分かっています。だからこそ、明日は勝負に辛くいきます。兄さんもがんばってください」
かな恵は無理をして笑っていた。
そして、俺は彼女に何も言うことができなかった。
何を言ってもいいのかわからなかった。
俺たちは無言で帰宅した。
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<次章予告>
「ついに団体戦優勝をはたした桂太たち」
「そして、始まる個人戦」
「リベンジを誓う強豪たち」
「優勝をねらう米山部長の圧巻の指しまわし」
「覚醒する桂太と葵コンビ」
「苦悩する文人」
「闇に堕ちていていくかな恵」
「果たして、個人戦の頂に立つのは誰か?」
「次回、激闘!個人戦編開幕!」




