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第百九十一話 関係③

「ずいぶん、うちの()()()()を可愛がってくれたじゃないか、山田くん」

 僕が、控室に戻ろうとすると、そこにひとりの男が現れた。

 敵チームの顧問であり、アマチュア将棋界のレジェンドのひとり高柳先生だった。


「ええ、去年の全国大会で、あなたの()()()()にひどい目にあわされましたので、その仕返しですよ。ミスター高柳」

「あいつは、弟子であって、弟子じゃないからな」

「まったく、あなたたちプロハンターは、そういうところは似ていますよ」

「初代の俺と、二代目のあいつは色々違うよ」

「そうですよね。高柳さんは、本当に人間的な将棋ですもんね。後半にひっくり返す感じの、粘々した変態将棋」

「おいっ」

「失礼。でも、本当のことですよね」

「ああ、それは否定しない」

「それに対して、二代目は……」

「ほとんど機械って言いたいんだろう?」

「はい」


 そう、二代目プロ殺しの将棋は異質だ。

 ほとんど人間と対局せずに、コンピュータとしか練習将棋を指さないらしい。

 大会で人間と戦う以外は、ほとんどがコンピュータにどっぷりつかっている異質な将棋。


 その棋風はほとんどコンピュータだ。

 序盤研究は、人間の定跡ではなくて、コンピュータの作り出した定跡を使用して、正確無比な終盤。一度、リードを保ったら、そのまま押し切ってしまう中盤力。

 完璧な存在だ。高校生大会は、出場大会すべてで優勝。無敗記録を更新中だ。


 その実力は、すでにアマチュアのカテゴリーにとどまっていない。

 高校生の大会だけじゃなくて、大人も含めた全国大会で優勝1回、準優勝2回。まさに、圧巻の成績。

 さらに、その大会結果で獲得したプロの公式戦への挑戦権も使って、現在、プロ相手に連勝街道をひた走っている。このままであれば、プロ編入試験の受験資格も獲得間違いなし。すでに、アマチュアの実力を超えている存在だ。


 僕は、その人に去年の全国大会の準決勝で敗北した。

 今年はそのリベンジに燃えている。

 だから、こんな地方大会で負けるわけにはいかないのだ。


「じゃあ、僕はここで」

「ああ、大会頑張ってね」

「先生のほうこそ」

「ああ、そうだ。言い忘れていたよ」

「なんですか?」

「今回の決勝は、最終的におれたちが勝つ、からさ」

「いくらプロ殺しの予言とはいえ負けませんよ」

「楽しみにしていてくれ」

 僕たちはそう言って別れた。


――――――――――――――――――――――――

用語解説

プロ編入試験……

抜群の成績を残したアマチュアがプロ編入するための試験。

受験資格が異常に厳しいため、現行制度で2人しか受験していない。

アマ全国大会で優勝し、プロとの公式戦で10勝以上かつ6割5分の成績を残したものだけが受験できる。

さらに本試験ではプロの新進気鋭の若手5人に勝ち越さなくてはいけない。

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