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第百七十五話 キズナ②

 なるほど、右四間飛車はフェイク。本当の狙いは、この強烈な端攻めね。

 端攻め。

 振り飛車党にとっては、もっともやっかいな攻撃手段である。

 将棋のほとんどの陣形は、端からの攻撃に弱い。もっとも端からの攻めは時間がかかるので、一長一短ではあるが……


 だから、彼女は序盤早々から、その攻撃に打って出た。

 右四間飛車というフェイントを用意して……

 完全にやられた。まるで、コンピュータのように正確な手順だ。


 この状況は相手が有利となる。

 間違いなく、私が劣勢だ。


 じゃあ、どうするのか。ここであきらめるのか?

 私を信じてついてきてくれる後輩たちを裏切るのか。

 大好きな彼にこんなみっともない姿を見せるのか。


 そんなわけにはいかない。

 だって、私は部長なのだから。


 対局相手にもいろんな事情があることはわかっている。彼女たちが気合を入れてこの大会に参加していることだって見ればわかる。


 でも、だって……


 対戦相手を思いやる余裕なんて私にはない。

 だって、盤を挟んだら勝ちたくなる。手を抜くなんて、彼女たちにも、私を慕ってくれている後輩たちにも失礼だ。将棋界には、相手にとって大事な試合では、たとえ自分が消化試合でも全力で行くという哲学がある。私は、それを信じてここまできた。今回もそれを貫く。貫かなくてはいけない。


 じゃあ、どうするのか?

 簡単なことだった。


 いつものように、泥沼へ引きずり込む。相手はきっとコンピュータを使った最新の研究方法を使っている。そんなスマートな相手には、私がもっとも得意とする戦い方で対抗しなくてはいけない。


 全てを飲みこむ泥沼へ。

 ここからは、私の将棋だ。


 私は、王をあえて不利な場所へと移動させた。


―――――――――――――――――――――――

人物紹介

松井佳代……

高校一年生。中二病で、言動が痛々しいが、仲間思いの将棋部部長。

読書家で、中二病の知識はそこから得ている。海外文学を好む。

成績は、意外と優秀。

アマチュア三段。部員たちが攻撃的な棋風になったのは、彼女の影響。

激しい将棋を好む。

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