第十七話 部活見学
「う、ひどい目にあったぜ」
おれは、先輩の「天誅」というかけことばの後、朝なのに満天の星空をみることができた。まぶたのうらは、プラネタリウム。そして、それはとても痛かった。
「まさか、あの脳内ラブコメラノベ設定の妹が実在しているなんて」
「ありえない」
部長と文人のふたりは、悪びれもせずにそう言いながら会場の準備をおこなっていた。
入学式の後の、部活動見学のための準備。
たぶん、10人くらいの新入生が来てくれて、4名くらいが入部してくれるだろう。そんな見通しだった。
「ああ、そういえば桂太くん?」
悪しき魔王は、天使のような笑顔だった。正直に言うと、カワイイ。
「なんですか?」
「かな恵ちゃん。見学に来てくれるからね」
「はあ?」
どうして、かな恵が。将棋なんて興味なさそうだったのに……。
「私が誘ったのよ。お兄ちゃんの雄姿を見に来なさいってね」
「ぐぬぬ」
部長め。よけいなことを。
「それにしても、私ももう三年生か~」
「感慨深いですか?」
文人が聞く。
「そりゃあね。入学したときは、こんな高校生活おくるなんて思っていなかったわよ」
「将棋漬けですからね」
「彼氏のひとりもできないし……」
そう自嘲ぎみな笑顔を浮かべる。部長がめずらしくしおらしい感じになっている。いつもこんな感じだったら、最高の美少女なのにな……。
「でも、最高の仲間たちにめぐりあえた」
部長の口調がきゅうに真面目になった。
「そして、これから新しい仲間もできる」
「そうですね」
「だから、今年こそは優勝するわよ。個人戦も、団体戦も」
「「はい」」
さすがは、部長だった。みごとなカリスマ性だ。思わず、「ジーン」ときた。
「だーかーら」
「「えっ」」
「桂太くん。セクハラさせなさい」
そう言って、部長がおれにとびかかってくる。
「いーやー」
「よいではないか、よいではないか」
なんで、あのすばらしいスピーチの後にこんな凶行におよぶんだ。このひとは……。
照れ隠しだと思うけど、せっかくのかっこいい部長像がぶち壊れですよ。
「あっ」
ドアが開いた音がする。
新入生たちに、おれのあられもない姿が見えてしまう。
「桂太さん、なにやってるんですか?」
そこにはかな恵の姿もあった。とても冷たい目をしている。
部長はいきなり、よそ行きスマイルでこう言った。
「ようこそ、新入生のみなさん、将棋部へ。このように、上下のわけへだてない風通しの良いアットホームな部活です。今日は、楽しんでくださいね」
いや、それブラック企業のうたい文句だから。




