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第百五十八話 西田東

「いい、みんな。もう少しで決勝よ。次は、県下最強の四間飛車使い「米山香」たち。相手にとって不足なし。全力で行きましょう」

「おー」

 私たちはそう言って結束を固めた。まだ、創部して間もない私たちの将棋部がここまで来れただけで快挙だが、それではダメなのだ。私たちには、早急な実績を作る必要があるのだから。


「じゃあ、行きましょう」

 私たちは、会場へと向かった。


 ※


「じゃあ、みんな行きましょう」

 部長は穏やかな笑顔でそう言った。すでに順番は決まっている。

 この前の練習試合と同じ並びだ。


 文人・かな恵・葵ちゃん・部長・おれ


 この順番となった。初出場の相手のため、ほとんど情報を持っていなかった。ならば、慣れた順番にしようということになったのだ。

 次の大会には、この大会の優勝校しか行くことはできない。もし負けたら、このメンバーでできる団体戦はここで終わってしまう。だから、負けたくない。


「よし、みんな行ってくる」

 文人は気合を入れてそう言った。負けられないという顔だ。


 文人の相手は、金髪のハーフ系少女だった。組み合わせ表には、田中マチルダと書かれていた。

 ふたりは、丁寧にあいさつをして、駒に手を触れた。

 準決勝が始まった。


 ※


「では、先手が田中さん、後手が丸内さんでお願いします」

 準決勝からつく審判の方がそう言った。俺が後手だ。


 俺は、この大会の初戦ということで緊張した手で駒を動かした。

 初手「△8四歩」

 これは、俺の得意戦法「角換わり」に誘導させるための手だ。


 相手も「▲2六歩」とつく。これで戦型はほぼほぼ決まったも同然だ。

 角換わり。


 序盤から角を交換し合う激しい切り合い。定跡化が進んでおり、研究勝負になりやすい俺の得意戦法だ。さらに、高柳先生の本を借りて、古今東西の定跡を研究することもできた。江戸時代の棋譜は、力勝負になりやすいので、今まで苦手とした力戦にも少しずつ自信を深めている。来るなら来い。俺は、力強く盤面を見つめていく。


 お互いに定跡手順のため、早めに手が進んでいく。

 大会の時は、持ち時間も少ないので、なるべく勝敗に直結する終盤に時間を残すことが重要なのだ。あとは、どのタイミングでどちらが定跡から外れるか? それとも、定跡どおりに進めて、終盤の力比べにもちこむのか? すべてはタイミング勝負となる。


 20手目までは定跡通りの展開が進んだ。

 そして、21手目、田中さんの手番で変化は起きた。


 その変化は、とても美しい所作によって引き起こされた大嵐となる。

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