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第百五十七話 だーくほーす

 会場に入った私は、最後の準々決勝の結果を確認した。その結果は3-0だった。第2シードで前回大会の準優勝校橋本高校は、今大会最大のダークホースによって飲み込まれてしまった。

 橋本高校は、個人戦ベスト4こそいないものの、ベスト16以上を3人要する安定した実力を持っていた。ダークホース西田東高は、そのスキがないメンバーを粉砕したことになる。それもストレートでの圧勝だ。あの高校は初出場ながら、大会でセットを落としていない。


「まるで無敵艦隊だな」

 観客のひとりがそう言った。


「無敵艦隊」

 アルマダ。大航海時代に最強を誇ったスペイン艦隊の通称だ。最近では、スペインのサッカー代表の愛称としても使われている。

 西田東高校の攻撃的なスタイルはまさに無敵艦隊だ。


 予選から確認できたところでも、「一直線棒銀」「升田式石田流」「ひねり飛車」「カニカニ銀」「右四間飛車」などなど。

 圧倒的な攻撃力で、敵をねじ伏せる戦法を使っている。これはとてもやっかいな相手。


 団体戦のメンバーを考えるとき、順番がかなり大事になってくる。どのように相手と相性が良い組み合わせにするか。準決勝の30分まで、私は頭を悩ませなくてはいけなくなった。難しい問題だ。


 西田東高校はかわいい子が多いのに、その中身は火の玉のような攻撃性を持っている。ダークホースのため、得意戦法もわからないので考えても仕方ないところも多い。本当にどうすればいいのだろうか。みんなの手前、弱音は吐けないけど、ため息は出てしまう。


 運命の準決勝まであと28分。


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用語解説

「一直線棒銀」……

矢倉囲いを崩すために使われる急戦。銀を棒銀のように一直線に進めて、敵の囲いを崩壊させる。火力抜群だが、カウンターに弱い。


「升田式石田流」……

以前、登場した早石田戦法の一種。

昭和の大棋士升田幸三が開発したため、こう呼ばれる。初心者の奇襲戦法であった早石田を名人戦でも使えるように大改造をおこなった。火力抜群の攻撃的な戦法。


「ひねり飛車」……

居飛車の相がかり戦法の一種。

飛車先の歩を交換した後に、飛車を横に大移動させる。その後に振り飛車戦法の石田流のように構える。

居飛車と振り飛車を融合させたような戦法。明確な対策が完成する前は、「将棋に完璧な先手必勝法があるとしたら、ひねり飛車だろう」ともいわれていた。


「カニカニ銀」……

矢倉囲いを崩すための急戦策。

銀が、中央に出ていく様子が、カニのように見えるためこう呼ばれる。

火力に全力を尽くす形で、かなり脆弱な守りとなる。


「右四間飛車」……

飛車・角・銀・桂・歩を使って敵陣を突破する作戦。狙いが単純だが止めにくい。飛車が元の位置から右の四番目に移動するのでこう呼ばれる。

 

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