第百四十八話 前日
明日から2週間ほど更新頻度を、1日1回にさせていただきます。
申し訳ございませんm(__)m
「じゃあ、みんな、ついに明日から大会がはじまるわ。全力で悔いなく大会を終えられるようにしてね」
部長が、部活の終わりにみんなに訓示をする。ついに明日、すべてがはじまる。
初日が団体戦で、2日目が個人戦だ。
団体戦のおれたちは、去年の成績が考慮されて決勝トーナメントから登場するシード扱いだ。昨年度の優勝校であり、個人戦の優勝者でもある山田さんを要する千城高校とは、順当にいけば決勝でぶつかる。
「去年のリベンジを目指して、がんばりましょう」
おれたちの高校は、去年準決勝で千城高校に3-2で惜敗した。そのリベンジを目指して、いままで頑張ってきたのだ。
「そして、次の日が個人戦よ。私と桂太くんはシードになっているから2回戦から登場。ほかの人は1回戦からだからがんばってね。まずは、全国大会出場できる準決勝ベスト4を目指してがんばりましょう」
部長は、やはりというべきか、さすがはというべきか、前回準優勝者のため第2シードになっていた。間違いなく山田さんと並ぶ優勝候補筆頭の位置にいる。おれは、部長とは別の山の第5シード。準々決勝で、千城高校の二番手である第4シード沢城さんとぶつかり合う。そして、それに勝てば、王者の第1シード山田さんと激突だ。去年の準々決勝のリベンジをするためにおれは燃えていた。
ほかのメンバーは、文人がまさかの3回戦で第1シードの山田さんと当たるとわかって落ちこんでいた。
「おれって、本当にくじ運ない」
そうぼやき続けていた。まあ、最近は吹っ切れてきたのか……
「まあ、まだ始まっていないしな。なんとかなるかもしれない」
そう言って、あっけらかんとしはじめている。よい兆候だ。本当に文人は最近いい意味で変わってきている。
かな恵は、部長と同じ山になった。もしふたりが勝ち進めば、準決勝で相まみえることとなる。ふたりのことをよく知っているおれとしては、そうなって欲しいような、欲しくないような複雑な気持ちだ。
そして、葵ちゃんは……
かな恵の近所に配置されて、2回戦で、第3シードの片山さんと戦う組み合わせだ。本人はちょっと落ち込んでいたが、おれはかなり楽観していた。それに勝てれば、準々決勝でかな恵と、準決勝で部長と戦うこととなる。そして、その可能性はとても高い。
たぶん、次の週末……
アマチュア将棋界は、葵ちゃんの存在を知るはずだ。おれのなかでは、すでに山田さん・部長に続く優勝候補グループに彼女の名前が存在していた。




