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第百二十一話 らち?

 次の日、おれは葵ちゃんと会っていた。昨日は、とんでもない状態になってしまったのだから、こんな癒しのイベントがとてもこころにしみた。

 発端は昨日の夜、彼女からメッセージが届いたことだった。


「桂太先輩、お願いがあるんです。明日、わたしと会ってくれませんか?」

 その意味深なメッセージにおれはすぐにイエスと答えた。

 かわいい後輩の深刻な話だ。イエスと答えないでどうする?

 それに、なんだか家族と顔を合わせるのが、ちょっと気まずいし……

 葵ちゃんのこととなると甘いおれだった…… いや、違うな。もしかして、利用しているだけなのかもしれない。


 そんなことを考えていたのがいけなかったのだろう。このイベントは、俗に言う「はめ手」だったのだ。おれを地獄へと突き落とす最悪のトラップが起動した。


 ※


「おーい、葵ちゃんー!」

「あっ、桂太先輩っ。すいません、きゅうに呼び出してしまって……」

「どうしたの、きゅうに?」

「実は、お願いがありまして……」

「なんだい?」

 葵ちゃんは言いにくそうにもじもじしていた。おれは、このしぐさを見るのが結構好きなのだ。ああ、目の保養だ。


「わたしの父と会ってくれませんか?」


 おっと、なんだこれ。相横歩取りくらい激しい将棋だぞ。段階いくつ吹っ飛ばしたらそうなるんだ。なに、単なる冗談だろう。きっと、そうだ。そうだと言ってくれ。おれは謎の懇願を心で繰り返した。


「どうしても、父が会いたいって言ってるんです……」

 おまえが、大事な娘に手を出すハエか~。そう言ってたたき切られそうだ。なんとなく、葵ちゃんのお父さんって怖いイメージがある。娘さんのことを溺愛してるのがよくわかるし。

 やめて、昨日から誤解に巻き込まれすぎて、わたしのライフはもう0よ。まあ、止まるわけもない。


「じゃあ、早速いきましょう。母が昼食を用意してるんです」

 おっと、後輩のご両親と顔合わせご飯会だとっ。

 将棋オタクのおれには、ちょっと荷が重すぎるだろ。そんなのは社会人になってからじゃないと、責任がっ。


 おれの目の前に、きーっと黒い外車が止まった。これ絶対やばいやつ。

「お嬢様。お迎えにあがりました」

 黒いサングラスをかけて、男がそう言っていた。

 やばい。アウトレイジ臭がびんびんやん。

 このままだと、「いま、なんでもするって言ったよね?」コースに突入しかねない。


「ありがとう。黒田。出して、早く」

 お助けええええ。おれはそう内心でさけびつつ、源邸に拉致された……

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