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第百十六話 悪夢再び

「兄さん、すいません。昨日の今日でこんな格好で押しかけて」

 かな恵は顔を真っ赤にしてうつむいている。そう、昨日の今日なのだ。あの「みぞおちの惨劇」から、まだ24時間も経過していない。思いだしただけで、あの時の痛みがぶり返してくるような気がする。あのダメージは、いろんな意味でおれの深いところに刻まれているのだ。


 それなのに、昨日とほとんど変わらない姿のかな恵が、おれの前に登場しているのだ。むしろ、隠しているからこそ、……い。隠すことが、萌えだというならば、これが萌えなのかもしれない。おれの前には新しい未開のフロンティアが……


 おれは完全に冷静さを失っていた。もはや、内心でなにを考えているのかすらよくわからない。難解な局面で、おれは謎の長考に沈んでいく。よく考えたら、かな恵が悲鳴上げるだけで、おれの人生、即詰みじゃね?という邪念をぬぐいされないまま……


「ど、どうしたの?」

 動揺して変な声を出してしまう。落ち着けおれの邪念。まだ、ゲームははじまってもいないんだ。

「バカな話なんですが……」

 かな恵は落ち込みながら事情を説明した。まだ、おれは延命できるようだ。


 ※


「旅行のせいで、洋服のストックがなくなった?」

「はい、お恥ずかしい限りです。最後に残った服を間違えて洗濯してしまって」

 たしかに、かな恵は年頃の女の子の割りに、洋服のストックは少なそうだった。

 いつもは制服を着ているけど、ゴールデンウィークで使わないからと、連休前にクリーニングに出してしまっていた。つまり、着れる服はない…… これはひとつのスペクタクル。なんで、連日でこんなラブコメみたいな展開になるんだ。


 ありえないだろう。冷静に考えて。

 ツッコミを入れたら、急に冷静になってきた。大丈夫、もうラブコメの定跡は連続で体験した。もう、次が起きるはずがないという確信しかない。


「それで、着れる服がないと……」

「はい」


「わかった。適当なシャツ貸すから、部屋にいなよ。さすがに恥ずかしいでしょ。いま探して持っていくから、さ」


「本当にすいません」

 かな恵って本当にどこか抜けているところがあるよな。そう思いつつ、おれはクローゼットを開ける。その風圧がいけなかった。絶妙なバランスで、かな恵の肢体を守っていたバスタオルは崩れていき……


「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 こうなった……

 これって、もしかして、頓死?

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