表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/531

第十一話 激突!四間飛車

「おい、なんかはじまるらしいぞ」

「聞いたところによると、米山さんと誰かが将棋でタイマンするらしいぞ」

「えっ、あの米山さん?」

「そうそう、どうやら痴情(ちじょう)のもつれで、部員が首をかけてるとかなんとか」

「それって、昔、うわさになった佐藤ってやつじゃねえの?」

「あのうわさ本当だったのかよ。米山さん、どうしてあんな地味なやつのことなんか……」

 部室の外まで騒がしい。どうやら、誰かが噂を流しているらしい。きっと、文人だ。

 そして、地味とかいったやつ絶対に許さない。おれの生存ルートだったらな。

 

「さて、覚悟はいいかしら? け・い・た・く・ん」

 これはダメだ。完全に戦闘マシーン(バーサーカー)と化していらっしゃる。

 この状態の先輩を止めるには、将棋で満足させるしかない。


「あ、あの、先輩?」

「あら、言い訳かしら? 無残に私を振った元パートナーくん?」

「誤解する言い方やめて。先輩のファンクラブに抹殺されちゃうから。将棋の研究パートナーで、それにまだ振ってないよ」

「あら、そう言って、私をダメンズウォーカーにしようと言うのね」

「だから、本当に……」


「ねえ、聞いた?」

「あいつサイテー」

「元カレだって? 明日の校内新聞の一面は決まりだな」

 どうして、春休みなのにこんなにギャラリー多いんだよ、この学校?!


「それで、先輩? 手合いは?」

「そうね。平手で。先手はキミにあげる。わたしの、はじめ……」

「はじめての弟子としてですね。わかります」

 おれは、大声で先輩の下ネタをかき消した。


 将棋は、先手が有利だと言われている。だから、段位が下のおれに、その有利な方を譲ってくれたのだ。

 ただし、それ以外は真剣勝負。

 先輩の目はそう言っていた。


「それに、なにかをかけないと楽しくないわ。勝者は敗者の言うことをなんでも聞いてあげるということで……」

「なんでも、ですか?」

「そう、なんでも、よ。後輩くん」


 とんでもないことになってしまった。なにを命令されるか、わかったもんじゃない。とりあえず、おれが勝利して、さっきの発言は冗談だとみんなの前で宣言してもらおう。そうしないと、明日の朝にはおれの首が将棋盤のうらにさらされてしまう。米山ファンクラブの原理主義者たちによって……。


「でも、お願いします」

「お、お願いします」

 問答無用で対局がはじまってしまった。


 おれは先輩の研究パートナーだ。だから、手の内はほとんど知っている。彼女が、「伝家の宝刀」を確実に抜いてくるということを確信していた。

 序盤の手は、お互いにノータイムで駒を動かす。


 そして、伝家の宝刀は姿を現した。

「後手4二飛車」

 四間飛車(しけんびしゃ)戦法だ。

挿絵(By みてみん)



――――――――――――――――――――――――――――――――――――

人物紹介

米山香……

高校三年生、17才。

桂太の通う高校の将棋部部長。女子ながら、県下トップクラスの実力をもつ。

前回の県新人戦、準優勝者。全国大会ベスト8など輝かしい実績をもつ。

小柄でショートカット。明るい性格で、ファンが多い。桂太もそのひとり。

ざっくばらんすぎて、親しいひとには下ネタを連発する悪癖も……。

桂太が入学してからは、彼を研究パートナーに抜擢して、サンドバックにしていた。

四間飛車戦法の専門家。むしろ、四間飛車しか指さないので、対戦相手に簡単に対策されるも、いつも終盤で逆転し、敵をなぎ倒している。

守備力には定評があり、部内では桂太の上位互換とも評される。

「受ける青春」「ニコニコ流」「米山建設」など数多くの異名をもつ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ