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第百一話 変態vs変態③

100話突破記念に、『将棋でアマチュア初段になる方法』https://ncode.syosetu.com/n8191fi/というエッセイを投稿しました。よかったら読んでください。

 どうしよう。

 わたしの守備陣は崩壊し、相手の穴熊は健在。最悪のパターンだった。初心者の葵ちゃんもがんばって、大金星をあげてくれたのだ。わたしがここであきらめるわけにはいかない。不利になってからが、わたしの将棋。いつもそう思ってやってきたじゃない。この戦法は、桂太くんとの「絆」でもあるんだ。わたしたちが、一年間かけてふたりで作ってきた戦法。これが、そんなに簡単に負けるわけがない。


 わたしは、追いすがる敵の龍を金でけん制し追い払う。西内さんは、あきらめず銀と桂馬で追撃をしようとするも、角を敵陣から呼び戻して、防御陣の再整備する。


「くう、悪あがきを」

 西内さんは、ここではじめて表情を変えた。もう余裕がなくなったようだ。


「えっ、なんで、おかしい」

 相手は、自分の攻撃手段がなくなったことを自覚したようだ。そう、銀と桂馬の追撃が悪手だった。これでわたしの防御陣は敵の攻撃を使って、整備が完了した。


「これが、あのうわさの”米山建設”なのね……」

 いつの間にかわたしにつけられたあだ名だった。相手に攻撃をさせて、それを利用し、逆に自分の守備陣を固くするわたしの将棋のあだ名。


「そう、これが、わたしの将棋。()()()()()()()()。だから、西内さん……」

 わたしは、王を狙うために、桂馬を動かした。


挿絵(By みてみん)



「あなたは、これで負けよ」

 わたしは、高らかに勝利を宣言した。


「えっ」

 彼女は自分の詰みに気がついていないようだ。それもそうだろう。かなりの長手数の詰みなのだから。

 それはまるで、いつもの葵ちゃんのように切れ味するどい詰み筋だった。


 いつも葵ちゃんの詰将棋の実力には感心している。でも、わたしだって、ひとりの将棋指しなのだ。自分じゃない相手の実力に感動させられていては、屈辱でもある。だからこそ、私は努力する。みんなの目標で居続けるために。みんなの部長であり続けるために……


 わたしがこれを読み切れたのもみんなのおかげだ。


 桂太君と研究できたからこそ、ギリギリのところで守りきれた。

 文人くんとかな恵ちゃんが負けてしまったからこそ、わたしは頑張れた。

 葵ちゃんの才能をみたからこそ、わたしもさらなる終盤の実力を磨こうと考えることができた。


 だからこそ、こんなにうまい将棋を指すことができた。

「うそ、まさか……」

 西内さんは、気がついたようだ。


「23手詰、なの?」

 彼女はそう言ってうなだれる。後から投了の言葉が聞こえた。

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