表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

100/531

第百話 変態vs変態②

ついに、百話到達です!

いつも本当にありがとうございます。

 見ている? 桂太くん。

 わたしを上回る変態がここにいるのよ……


 わたしは名作バスケマンガの名言を改編して、脳内でぼやく。自分が、少しやばいやつだという実感はあった。でも、西内さんは、もっとやばいです。


 すでに、局面は中盤まで来ていた。

 彼女の攻撃を、わたしはひたすらに対処し、相手を封じ込めていく。


「ああ、楽しい。米山さんとの神経戦」

 西内さんは、楽しそうにそう言って指していく。守りを固めて、しっかりとした攻撃。飛車を角でいじめて、陣形を崩していく。言っていることは、変態じみているのに、指す将棋は正統派だった。そういえば、プロでも、言動や奇行が多い人に限って、将棋が正統派なことが多い。


 公式ホームページで変顔ダブルピースをしていたことで有名な会長だったり、タイトル戦に勝って弟子と裸踊りしたひとだったり、ひたすら下半身を露出しようとしたり…… 全部、同じ人なんだけどね。


 彼女は、わたしの陣形が少しだけ崩れたことを確認すると、ギアを一気に攻撃へと変換した。歩でわたしの銀冠をけん制した後に、飛車とわたしの角を交換した。


挿絵(By みてみん)


「ついに、きたのね」

 これが通称、穴熊の暴力と呼ばれる戦い方だ。

 本来ならば、不利である攻撃を、守備の固さを理由に強引に通す。価値的には、最も高い飛車を切って、角や金をとるようなことも平気でおこなわれるのだ。相手に強い駒を渡しても、穴熊を組んでいるため、怖くない。相手に時間を使わせて、無理攻めすら通してしまう。穴熊の最大の魅力は、守備力を生かした攻めにある。


 わたしは、慎重に思考を整える。その間に、彼女は二度目の攻撃をしかけてきた。

 さきほど、飛車と交換した角をすぐに捨てて、金と交換したのだ。

 これまた、大駒と価値の低い駒との交換だった。


「くっ」

 わたしは、すぐに角を駒台においたものの、かなりの痛手を負った。守備のかなめに存在した金を失ってしまったのだから。


「ああ、もう少しで、米山さんの王に手が届く」

 前方では、ハアハアと危ない息遣いが聞こえてきた。お巡りさん、こっちです。


「届いて、この気持ちっ」

 彼女は、たたみかけるように金を使って王手をかけた。


 ※


 彼女の猛攻で、わたしの守備は吹き飛んでいた。さきほどまであった銀冠は消えてなくなり、残骸のようなものだけが残った。わたしは、桂馬を跳躍(ちょうやく)させる。これが、わたしの最後の狙いだった。


 相手は警戒して陣形を整えた。わたしは一歩だけ王を安全な場所に動かす。これを防がれては、全てが終わってしまう。


挿絵(By みてみん)


 でも、負けられないのだ。

 だって、わたしは、部長なのだから……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ