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第十話 部長

ちなみにこの世界では、将棋が人気となり、女性の棋力向上が著しいので、男女共同で大会がおこなわれております。現実とは違うので、ご注意を!

「おはよう、ふたりとも」

 部長は、いつものように陽気な笑顔でそう言った。


 米山香(よねやまかおり)。おれたちの将棋部の部長だ。

 今年、高校3年生の女子。アマチュア()()


「いたなら、声をかけてくださいよ。ビックリするじゃないですか」

 おれは、そう抗議する。

「ああ、ごめん、ごめん。ふたりとも熱心に対局中だから、声をかけにくくてさ。えーとどれどれ」

 そう言って、部長はシレっとおれたちの盤と、メモしていた棋譜を確認する

 全然懲りてないよ、この部長。


「なるほど、なるほど」

 棋譜をざらっと読み込む部長。このひとのことだ。脳内で、一気に()()しているのだろう。


「おしかったね。文人くん。序盤は、最高の形だったのにね。やっぱり、定跡をはずれた後が、課題だね。あと、終盤にミスするくせも直さないとね。詰将棋ちゃんとやってね」

 さらっと、文字を見ただけで、彼女はすべてを把握したようだ。文人の改善点を的確に指摘していく。

「は、はい、がんばります」


「それで、桂太くんはー」

 そう言って、なぜか体をおれの背中に近づける。

 小柄な体が、おれの頭に接近した。


 なんだか、大きくてやわらかいものが当たってるんですが……。


「あ、あの部長?」

「なーに、桂太くーん?」

あ、あたってますよ(なにか柔らかいもの)

「ばかね。あててんのよ」

「(うわあああああああああああああああああ)」


 その様子をみながら、文人は爆笑していた。


「さて、からかうのは、これくらいにして……」

「もう、やめてくださいよ、ほんとう」

「嬉しいくせに♡」

「……」


「桂太くんは、会心譜って感じだったね。でも、あえて、不利な局面に突入するのは、感心しないな。自分から積極的に動いて、主導権を握らないとね。先手(おとこのこ)、なんだから待ってるだけじゃだめだぞ」

 あれ、これ将棋の話ですよね、部長?


 ※


 あらためて、彼女のことを紹介しよう。

 米山香(17)。将棋部部長。アマチュア四段。うちの部活最高位。

 うちの県の将棋好きには、ちょっとした有名人だ。


 県の小学生将棋トーナメント優勝、中学生将棋トーナメント優勝1回・準優勝2回と幼少期から大会の上位に名を連ねてきた。去年の新人戦では、準々決勝ではおれを倒した全国3位の山田さんと()()()で激突した。


 結果は、1勝2敗1分けで準優勝。全国大会では、ベスト8まで勝ち進んでいる。

 県内では、大人を含めてすでに最強クラスと言われていて、山田さんとは幼いころからのライバル関係で死闘を繰り広げている。


 彼女がこの学校にいるから、おれはここへ進学した。

 その憧れの女性が……。


 まさか、こんな痴女だったなんて……。


 ※


 なんとか、部長をふりほどいて、おれたちは部活を始める。

 部活と言っても、やることはほとんど変わらない。おれと文人は、さきほどの対局を振り返っていた。

 部長は、むこうで難しそうな詰将棋を解いている。


「そういえばさ、桂太。昨日、一緒にいた女の人って誰なんだ? 彼女?」

 文人が爆弾発言をしてしまった。なんで、よりにもよって、おまえが目撃しているんだ。もちろん、部長にも聞こえていて、覇〇色の覇気ばりに、殺気が伝わってくる。


「妹だよ、妹」

「おまえに妹なんて、いたっけ?」

 そんな答えにくい質問しないでって。


「お仕置き、いや、教育が必要みたいね。け・い・た・く・ん」 

 部長が、猛スピードで駒を初期配置に並べてきた。

 あっ、おれ死んだ……。

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