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 僕が目を覚ますと、母さんが僕を見下ろしていた。

 どうやら地面に寝っ転がっているようなので、僕は上体を起こして、ぼんやりとした頭を晴らそうと首を振る。

 「大丈夫ですか?」

 母さんがやけに丁寧な口調で僕に話しかける。

 僕は母さんを見上げる。母さんは僕を見下ろしている。特徴的な銀髪と、整った顔から作られる微笑で、僕に喋りかけてくる。

 僕は笑顔で母さんに、心配ないことを告げた。

 「大丈夫だよ、母さん」

 「母さん?」

 「そうだよ、母さんだよ。正確に言うなら年齢は僕の数個上の僕のお姉ちゃんにして学校の後輩なんだけど前世のお姉ちゃんが前世の僕を腹を痛めて産んででもそのことをお姉ちゃんは知らないけどそれでも僕はお姉ちゃんのことを母さんと呼びたいんだ」

 「う、え? ん?」

 「どうしたの? 母さん」

 「何を言ってるんですか?」

 「母さんが何を言ってるのさ」

 「いえ、そうですね……はい、すみません、ちょっと前世の記憶が入り乱れて」

 「思い出さなくていいよ」

 「あ、はい」

 「それにしてもどうして僕はこんなところにいるのだろう?」

 「さあ……とりあえず、家に帰りましょうか?」

 「え? 何言ってるの? 僕たちの家は嫉妬に狂ったおじいさんに放火されてなくなってしまったじゃないか」

 「そうですね。じゃあ、ホテルでも借りましょうか」

 「いやいや、だからちょうどいい廃車を見つけたって言ったじゃん」

 「……廃車?」

 「うん。あそこのトランクの中なら金属に囲まれてるから安心だよね」

 「そうですね」

 「空間充填率が低いのが怖いけど、かといって新品は危険だから贅沢は言ってられないよね」

 「そうでしょう、そうでしょう」

 そういいながら母さんは僕に手を差し出した。

 母さんはにっこりと僕に笑いかけた。

 「さあ、行きましょうか」 

 「……うん」

 僕は母さんの手を取って、立ち上がった。

 僕たちは手をつなぎながら、家となる廃車に向かって歩き出した。

 僕は心細くなって、ぎゅっと母さんの手を握る力を強めた。すると、母さんも僕の右手を強く握り返してくれた。

 僕はそれが、とても嬉しかった。


 ふと、僕は、左手に、何かを握っていることに気づいた。


 それは、おもちゃのピコピコハンマーだった。

 どうしてこんなものを持っているのか、僕は思い出せない。

 それを見ると、胸がざわざわとして、どうしようもなく不安になる。怖くなってくる。

 なんだかわからないけど、いっそのこと、ここで捨ててしまおうか。

 そう思って、捨てようとすると、また心がざわつく。

 少し悩んで、結局、捨てるのをやめた。


 そんな僕を母さんが、にっこりと笑って見ていた。僕は母さんに笑い返した。

 そうやって、僕は、母さんと歩き続ける。


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