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14話 とても恥ずかしい

というわけで、俺がやってきたのは近所のデパート……ではない。


二駅ほどまたいだ先にあるショッピングモールである。


近所のところでは顔見知りに出会う可能性もあるので、こっちを選んだのだが、やや後悔していた。


「人めちゃくちゃ多いじゃん……」


学生が中心でファミリー層の多くない近所と比べて、二駅またいだだけで、人が半端ではないほど多かった。


「いいですね~。私達のいちゃいちゃをどんどん見せ付けましょう!」


楪は楪で、相変わらず目立つ。見た目可愛い+浴衣+俺にやたらくっついてくるで、幽霊要素0なのに、電車でもここでもめちゃくちゃ注目を浴びた。


これで幽霊までばれたら、尋常ではないことになりそうだな。


「なんでだよ、普通にしろよ」


「いいじゃないですか。けっこうカップルも多いですし」


「そのカップルからも注目を浴びてるけどな」


近所のデパートと比べても大きくて、いろいろな店が入っているから、おそらくデートスポットとしても優秀なのだろう。確かに多い。そして、そこの男から注目を浴びている。彼女がいるくせに違う女に目移りすんなよ。まだうちのクラスメイトのほうが、可愛げがある。


「はぁ~、俺は入らなくてもいいだろ」


そして下着の店、いわゆるランジェリーショップに到着した。


「えー、でも私の下着は槐さんのためですし」


「間違ってはいないが、それをでかい声で言わないでくれ。やっぱり嫌だと思うぞ。いくらカップルでもさ、他の女性は俺との関係性は無い他人だろ。そういう人がいたら、下着を買いづらかったり、恥ずかしかったり、不快に思ったりする人もやっぱいるだろうしさ」


「槐さん……」


俺の説明を聞いて楪が真顔になる。うん、さすがに反省の気持ちが。


「初めてカップルって言ってくれましたね……。嬉しいです!」


「お前序盤しか聞いてないだろ。後半の俺の高説を返せ」


「いえいえ、ちゃんと聞いてました。じゃあ聞いてみましょうか。すみませーん」


楪は店に入っていって、店員と他にいた5人ほどのお客さんに声をかけていた。


お客さんは俺達の同世代からちょっと上、俺の母親くらいの年齢まで幅広い。誰か1人くらいは断るだろ。


「槐さん! OK出ました!」


「いいんかい!」


まさかの展開であった。


「はい、いらっしゃいませー」


「あのー、店員さん。いいんですか?」


俺はまだ現状を受け入れられず、改めて質問してしまう。


「はい、さきほどお客様がちゃんと配慮をするような言葉を言ってましたから、他の方を不快にさせないように振舞っていただけると思えましたので」


まさかの墓穴だった。


「うん、いいんじゃない。彼女さんが一緒に来たいって言ってるわけだし」


「ちゃんと彼女さんを見てあげればいいのよ、変な目は向けなさそうだしね」


「可愛いわー。下着を選ぶくらいで気を使ってくれたり、照れてくれるなんて~。私もあんな青春送ってみたかったわー」


「おっほっほ、若いのぉ~」


店員さんどころか、お客さんまで好意的である。なんでやねん。


「よし、じゃあこれで一緒に入れますね!」


「まじかよ」


というわけで、俺は女性の花園に合法的に足を踏み入れることになってしまった。


「じゃあ行きましょ」


それでも俺がためらっていたので、楪が俺の手を引いて店内に入っていった。やだきゅんときちゃう。いかん、動揺のあまりキャラがぶれ始めた。


うう、優しい視線が痛い……。悪意の目線は無いが、暖かい目線もそれはそれでつらいものがある。


「えーと、これなんかどうですか? 槐さん」


「えーと、どうなんだろうね?」


「じゃあこっちはどうですか?」


「どうなんだろうね」


「もー、ちゃんと選んでくれなきゃ、中についてきた意味がないじゃないですか!」


「そ、そうは言われてもだな」


楪が頬を膨らませて文句を言ってくるが、俺にどうしろというのか。


目の前には色とりどりの下着が並ぶ。


男の下着とは違う、複雑で繊細な作りこみの模様とか、色合いとか、それ専用の職人でもいるのかというレベルである。匠の技術だ。


「これとかつける意味あんのか? 透けてんじゃん」


「こんなのは普通だと思いますよ」


「まじか」


「というか、ずっとつけてませんでしたから、どれつけても今よりはですからね」


「それを言うなら楪は生前はつけてたはずだろ?」


「生前のその辺りの記憶は曖昧なんですよね~。もしかすると、生前も下着無しスタイルだったから、死んでからもそうなったかもしれないと思ってたりします」


「そんな中学生は嫌だわ」


レベル高すぎる。


「まぁ、それは冗談として。真面目に選んでくださいね。槐さんの好みはちゃんと知っておきたいんです。どうせ見せるのも脱がすのも槐さんなんですから」


「そういう生々しい発言は控えてくれないか。ほら、周りの方にも」


「彼女さんの方が積極的か……、私ももっとアピールしてみようかな……」


「頑張らないと高校生に負けるかも……」


「そんな青春送ってみたかったわー」


「ほっほっほ、若いのぉ」


そんなに不快に思われてない! というか後ろ2人台詞変わってないじゃないか。


「でも難しいのは分かります」


「へっ?」


「ほら、私サイズがけっこうありますから……、なかなか好みのサイズと実用性を兼ねるものがなくって。後、思ったよりも高いです……」


相場が全く分からん。どれどれ。


「高! まじかよ」


「うーん、ピンキリありますけど、ある程度見た目の可愛さも兼ねるとこれくらいです……、でも私はお金を持ってませんし……」


うーん、世間の不思議だな。俺のパンツがちゃんと安いのを狙えば15枚くらい買える値段だぞ……。


「ま、まぁ値段のことはいいから。あまり俺は金を使わないから、余裕あるしさ。適当なものを買ってまた揉めるのも嫌だしさ。そこは気を使わないでくれないか」


実際俺の生活は仕送りだし、余計な遊びをすることもないから基本的には金は余裕がある。


それに加えて、楪がうまいこと料理を作ってくれるから、更に出費は下がっている。


しかも楪自身は食費や光熱費があまりかからないので、かなり助かっている。


これくらいの出費をしても、あまり問題はないだろう。


「槐さん……、ありがとうございます……。じゃあ、好きなのをいくつか選びますから、どっちがいいですか方式を採用しましょうか」


「あの伝説のあれか。まぁそれなら難易度低いか」


「はい、じゃあちょっと待っててくださいね」


そして楪はいくつかブラとショーツを選んで持ってくる。


「じゃあこれとこれはどっちがいいですか~?」


「この面積で大丈夫なのか……」


小さすぎるのだが、サイズはあってるのか?


「私はお胸もそうですけど、ちょっと安産型でもありますから……。ちゃんと隠せるのは可愛くなくて……」


平均値を知らないから知らんが、確かに楪はお尻もまぁまぁ大きい。じっと見てたわけじゃないよ。


しかもなまじブラがかなり大きいから、余計に小さく見える。納まるのだろうか。


「一応……、こっちかな?」


それでもずっと持ったままで、俺の目を見て逸らさないので、一応答える。


「なるほど……。セクシー系が好みと……」


「何分析してんだ」


この辱めは辛い。


「じゃあ今勝ち抜けた子と、こっちならどうですか?」


「勝ち抜け方式かよ。まぁこっちだな」


「おお、これ強いですねー。やっぱりこういうのが好きですか? 私がつけてるのを想像しちゃいますか?」


そういうことを言われると、無意識に意識しちゃうだろうが。


楪は顔は可愛い系なのに、出るところが出てる我がままボディだから、そのギャップもやばい……。


「じゃあ形はこれくらいにして、色も選びますか」


「色は別にいいだろ」


「いえいえ、淡色系だと清純派になりますけど、濃い目ですと色っぽくなりますから」


「楪はつい最近まで下着つけてなかったのに、どこからそんな知識得てきたんだよ」


「クラスの皆さんとの女子トークに加えて、今日あの後、少し教えてもらいましたから」


あいつら。楪と何か話してると思ったら、知識を吹き込んでやがったのか。


それにしても、うわ……、女子の下着、複雑すぎ……。


「さて、残ったのはこの8枚、ブラ4枚にショーツ4枚ですね」


「予算として、3枚ずつに抑えてくれるか」


ワリとお高いので、最終候補に残った4枚ずつを買うことはできない。


選んだ結果、上と下のバランスの問題もあったので、自動的にセットになっていた。


「じゃあ除外する1セットを槐さんが選んでください」


「まぁそうなるよな」


しかし、かなり多くの中から選んだ4セットである。


既に見た目だけでの判断は難しいものがある。


「じゃあ最後は触感ですね。触ってみてください」


「え?」


「だってもう選べないんですよね。割と違いますよ」


「……じゃあ、失礼して」


さすがにわしづかみにはできないので、指先で触れてみる。


滑らかな手触り。これが女子の下着か……。


ぶっ。


「わぁ! 槐さん!」


女子との付き合いも少ない童貞には刺激が強すぎた。


結局最後の選択は店員さんにお願いして、俺は外で休んでいた。


「ふぅ~、楽しかったですね」


「俺はもう勘弁だ。精神的に持たない」


「ふふっ。槐さんけっこうドライな感じなのに、ピュアなんですね。可愛いところを見つけちゃいました」


受ける煽りにも突っ込みを入れる余裕が無い。


「デートみたいでしたね」


「ああ、そうだな……」


「じゃあデートついでにひとつお願いいいですか?」


「何だ?」


「今日は手をつないで帰ってもらえませんか……?」


「今更じゃないか? お前俺に押し付けてきたり、腕を組んできたり良くしてんじゃん」


「あ、あれは私からのアプローチじゃないですか。それに手はまだつないだことありませんよ! 手は槐さんからもつなごうとしてくれないと、無理ですから」


「ああ、そういわれればそうか……」


「槐さんは私がくっついても文句は言いますが、引き離そうとはしませんから、嫌ではないと思ってるんですけど……、でもたまには槐さんからも……やってほしい……、と思ってまして……、だから、いつかお願いしてみようと思ったんですけど……、なかなか勇気が出なくて。ほんとに嫌われたらどうしようかと……」


「まったくもう、お前はいじらしいのか積極的なのか分からんな。いいって、それくらい。ほれ」


すでにボディランゲージはやられまくっている。ここで断って楪のテンションが下がるくらいなら、手くらい差し出してやろう。


「あ……、はい」


そして楪は俺の手を握ってくる。相変わらず幽霊とは思えないほどの暖かさと柔らかさである。


「槐さん、手が大きくて暖かいですね……。男の人なんですね」


おおう、急にその照れ顔といじらし台詞は汚いだろ。ドキンとしたわ。


「楪の手はちっさいな。この手で家事をさせてるのが申し訳なくなるくらいだ」


「子供っぽくないですかね?」


「可愛らしくていいんじゃないのか?」


「もー、槐さん、私をこれ以上槐さん好きにしないでくださいよー! えい、サービスです」


俺の台詞の何かがうれしかったのか、つないでる手に指を絡めてきて、そのまま腕を組んでくる。


すると腕が胸に当たってしまう。ああ、やべぇ、顔がにやける……。


嬉しいんだけど、俺のいろいろなものが反応してしまって困る。


そしてそのまま俺は自分との戦いをしつつ、楪のさせたいままにして、帰路についたのであった。



ちなみに、下着をつけたので、楪は無事制服デビューとなったが、俺の下着の趣味がクラスメイトの女子にばれるという辱めを受ける羽目になったのは、また別に話である。

書いててなんだこの内容はと思ってしまった。

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