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12話 万能です

「お前は実際に活動がしたかったのか」


「はい! 初めからそう言ってます」


「だったらせめて女子も活動してる部活にしろよ、何で男子部しかない部活チョイスした!」


「見るだけならただですよ」


「俺は後でただではすまない気がする」


「うまいですね!」


「褒めなくていい! 次はどこだ!」


「乗ってきましたね!」


「違う!」


「そのまま私に乗って……」


ガン!


言わせる前に殴った。


「いったー」


「さて、次はどこにいくんだ?」


「え~、何事もなかったかのように話進めるんですか」


「どうせ痛くもかゆくもないんだから、いちいち気にするほうが疲れる」


「優しさが足りませんよ。私はこんなに槐さんに尽くしてるのに!」


「わざとらしく大音量で言うな! 分かったから、次はどこに行くんだ?」


「そうですねー」


そして、楪の部活見学は更に進んでいった。


次に向かったのは陸上部。


「見学かい? 好きに見ていってくれていいよ」


陸上部の部長らしき人が快く受け入れてくれる。というか、ここの生徒は幽霊に対する拒否が全く無いな。


「よし! じゃああれを飛びます!」


楪の目の先には走り高跳びの練習ゾーンがあった。あれをやりたいのかな?


「お、やってみるかい? どうぞ」


陸上部部長は、楪をエスコートしようとして、自然に手を肩に触れようとする。


スカッ。


「おおう?」


しかし、その手はすり抜けてしまった。


「駄目ですよー。私に触れていいのは槐さんだけなんですから」


あれすら駄目か。どんだけガード固いんだよ。


それにしては俺にはゆるゆるというか、俺はむしろガードの内側か。


「そ、そうか。じゃあ準備をするから少しだけ待っててくれ」


あの先輩優しいな。



「なぁなぁ柊くん?」


「はい?」


俺はその様子を遠めに見ていたのだが、なぜか俺に話しかけてくる男子生徒がいた。


こいつのことは知ってるな。クラスメイトではあいが、梧つながりで顔くらいは分かる。


そして、こいつ以外にも3人くらい一緒に俺を見ている。何の用事だろう?


「君は楪ちゃんと一緒に暮らしているんだろう?」


「まぁ一応な」


「家ではどんな感じなんだい?」


「家でも大体同じだとは思うが」


イマイチ会話の要領を得ない。何を言いたいのかな。


「それでもやっぱりプライベートな空間だと多少は気を抜いたりしてるよね」


「まぁな」


あいつは姿を消せるから、外でも気が抜きたいときは抜いてるけどな。


「そこで、ものは相談なんだが、その家でのプライベートな写真を収めて、我々にくれないか?」


なるほどそういうことか。


「嫌だよ、俺にメリットないし」


そんなことを言おうもんなら、楪に余計かまわれそうだ。


「ただとは言わない。最低1枚2,000円で、ものによっては色をつけようじゃないか」


「一応考えておこう。そもそもあいつが幽霊である以上は写真に写らない可能性もあることは考慮に入れてくれよ」


「十分だ。ありがとう」


いや、だって金はあるに越したことはないし。


「じゃあいきまーす」


そんなこんなで俺がごちゃごちゃやっているうちに、準備が整ったようで、楪は手を上げて走り高跳びを始めようとしていた。


どうでもいいが。浴衣姿のままだから、江面がシュールだな。


「はい、ぴょーん」


走り高跳びのバーは170センチくらいに設置してあったが、楪はそれを2倍以上越えてしまった。


まぁそもそも浮いてるわけだしな。高校生記録どころか、日本、いや確か世界記録でも3メートルは飛んでいないはずだから、とんでもない記録だ。そもそも飛んでないしな。


「えーと、ただいまの記録は測れる高さの最大を超えてしまったので、測定不可能です!」


「おー、すごいな!」


「さすがだ」


「いや、褒める前にもっと突っ込みをすることがあるはずだろ」


皆寛容すぎる。


「うーん、彼女が正式に部活に参加してくれれば、レギュラーポジションは間違いないんだけどな」


そういう次元の問題ではないとも思うが。


「槐さん!」


そして、再び俺に0距離で近づいてくる。


「見てました?」


「ああ、見てた見てた」


「惚れ直しましたか?」


「今の場面を見て惚れる要素がないし、まず惚れ直すには、1度惚れなきゃだめだろ。だから前提から違う」


「うーん、残念です」


そんなこんなで陸上部の見学は終わった。



その後もいろいろな部活を見ては、楪が注目の的となった。


バレー部ではほぼどこでも返せるレシーブに、超高いところからのスパイク。バスケは全部ダンク可能で、相手のシュートも止めてしまう。


文化部でも、調理部では既に見せられたハイスペックな料理スキルを見せつけ、手芸部でも、完璧な手先の器用さを見せ付けた。


どこに行っても、幽霊であることは分かっている上で、受け入れられている。というよりむしろ熱望されているので、俺はどんどん肩身が狭くなる思いだった。



「うーん、楽しかったですねー、あ、すぐご飯作りますから」


俺と楪は1日を終えて、寮に戻ってきていた。


「あー、疲れた」


体力的というよりは、精神的なものが大きいが。


「……槐さん……」


「ん、どうした? 入る部活でも決まったか?」


「い、いえ。どの部活も同じくらい楽しそうで、決めれないくらいです……、それよりも」


「?」


「槐が側にいてくれないと、私は部活ができません。でも槐さんは迷惑ですよね……」


「なんだ今更」


「私は部活をしてみたかったので、槐さんに迷惑になると分かっていても、今日は我がままを言わせてもらいました。ですから、槐さんが嫌なら私は」


「はぁ~。お前は何も分かってないな」


俺の目の前で俯く楪の頭をついついポンとしてしまう。


「え?」


「楪の目的を果たさなきゃお前は成仏ができないんだろ。前も行ったが、迷惑なのは今更なんだ。お前が部活をやることで、ちゃんと成仏に近づくなら俺は別にいいって。俺は本当に嫌なら絶対に断るから、俺がなんだかんだで付き合ったときは、そう思ってくれていいから」


ああ、なんでこんなこと言ってんだろうな。実際に迷惑だし、疲れたし、学校に無駄に敵を増やしたし。


ただ、楪の落ち込んだ顔を見ていると、妙に心がざわつくのである。いつも笑顔の子が悲しそうな顔をするのが気になってしょうがなかったのかな?


「槐さん! 愛してます!」


「ぐほっ!」


そのまま腰に突進されて、抱きしめられる羽目になった。


ちなみに部活については、特定に所属しないで、助っ人のようにいろいろな部活に参加する形式となった。


要はずっと体験入部をし続けるようなものである。やっぱある程度は断るべきだったかも。

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