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ボク、もういっぱいがんばったよ

大学のお休みを利用して病院主催の看護学生育成実践実習に参加しました。


前回も参加させていただいた事のある大学病院。参加学生もほぼ同じ顔ぶれでした。


看護師長さんや看護学生育成実践実習を開催して下さった看護部の方の挨拶の時、前回に引き続き今回も参加してくれたやる気ある学生が多くいてくれる現状に感謝しています。そのやる気に応えるプログラムを組んであります


とのこと。みんな実習を楽しみにしていた様子です。前回看護師、医師の方々に色々教えていただいたし育てて下さいました。


前回もお世話になった坂本看護師長と桃谷医師のお二人が、小児科病棟配属になった4人の看護学生(前回も小児科病棟配属学生私を含め2人・前回循環器病棟一人・今回初参加一人)に向き合い話し出しました。


『前回もこの病棟配属だった菜須さん、三谷さんは少し厳しいかも知れませんが看護師として一番学びたくない目を背けたい病気もあると言うこと。君達ふたりの大学に連絡させてもらい現状を確認した上で将来を見据え、重篤病室を担当して看護学生として更なる成長を望みます』


と看護師長さんに言われました。お互い顔を見合わせ頷いた。


『はい。看護師として成長していけるよう学生の内に学べる事は学び吸収できることはしたいと思います』


三谷さんと立派は看護師目指し支えあい頑張ろうと誓いました。


私達ふたりは、学生では担当しない重篤病室へ看護師長と挨拶にいく。


その前に看護記録を見なさい。と言われて三谷さんとそれぞれ担当の子の看護記録に目を通す。


内藤日向(仮名)君 8歳

病名・経過過程などは割愛させていただきます。先月の日付で「予後6か月」告知済みと記録してある。


今月末、退院。在宅看護。


基本情報は頭に入れた看護学生ふたり。


主治医の桃谷医師と坂本看護師長と病室へ回診に同行させてもらう。回診後、看護師長から私を紹介され嬉しそうに笑ってくれる日向君。


『日向君こんにちは。看護師のお勉強している菜須よつ葉です。仲良くしてくれたら嬉しいな』


と挨拶を終えた私に日向君は笑顔を見せてくれました。


『お姉ちゃんみたいに勉強がしたい』


という日向君のリクエスト。何をするのか、何を教えたら喜んでくれるのだろう?


主治医の桃谷医師と看護師長に相談をする。看護師長は「院内学級」があるから相談してみたら? と言って連絡を入れてくれた。院内学級の場所を聞き小学校に行ったことがなくて「勉強がしたい」とのリクエストに何をしてあげたら良いのか教師のアドバイスをもらいに移動する。


ノックをして返事を待ち教室に入る。教室には、まだ生徒さんの姿はなく先生が準備をしていらっしゃった。私の相談を快く受けてくださり考えて下さった。


国語なら教科書を貸してあげるから音読してみたら?


算数なら数遊びのプリントあげるわよ。と言ってくださった。男の子なので?! 算数かな? と思いプリントをいただいて教えるこつなどを教わり、即席、よつ葉先生に! 


ナースステーションに戻り看護師長に報告。桃谷医師にも報告をして病室に向かう。


『日向君、お邪魔します』


『よつ葉お姉ちゃんだぁ』


嬉しそうにしてくれる。


算数のプリントを興味津々に見つめる日向君。


『算数のお勉強しようか?』


と声をかけると、目を輝かせて


『うん! さんすう』


と嬉しそうだった。元気か?と問われれば、前回の実習した小児科の子供たちは、病気と言われなければわからないくらい活気? うまく言えないけど生きる力を持っていた様な。(ごめんなさい、表現したいけど言葉が見つからない)


日向君の希望で、よつ葉先生の算数のミニミニ授業を始めた。とても楽しそうにプリントを見つめ私に質問をしてくる日向君。


少し集中すると息が上がっている様子に、ナースコールを素早く押して、ベッドに横にさせる。日向君は、それでも算数のプリントをしたがる。


『日向君、落ち着いたらまたプリントしたら良いんだよ。今は、ゆっくり深呼吸して先生を待とうね』


声をかけて意識を保つよう心がける。


『よつ葉先生…ありがとう。ボク、授業してみたかったんだぁ。ボク、もういっぱいがんばったよ』


とニッコリ笑ってくれるのです。桃谷医師に診察をしてもらい、急変ではなく興奮のための動悸。一安心。日向君に


『日向君のプリントだから安心して。眠ってからまたできるよ』


と言うと「うん」と頷いて、眠った日向君


ナースステーションに戻り、看護記録に記入をする。


桃谷医師に『嬉しそうな顔をしていたの久しぶりに見た気がしたよ』


看護師長に『日頃、してあげられない部分を菜須さんがしてくれたからあの笑顔を見せてくれたんだと思う。看護学生の今だから学べたことだと思う。今の気持ちを忘れず看護の道を進んでいらっしゃい』


おふたりからお言葉をいただきました。


看護師として避けては通れないことの1つを、病棟で学びました。


予後・・。 今を懸命に生きている日向君に学ばさせていただきました。


看護学生として、日向君に向き合い言葉を交わし、何もできない私に笑顔をくれました。


お家に帰って、好きなことをして欲しいと思います。


日向君が言った『ボク、もういっぱいがんばったよ』の言葉に、泣きそうになりましたが、ここで泣くわけにはいきません。日向君の手に手を添えて


『偉かったね。いっぱい頑張った日向君の姿はかっこいいよ』


と言うと、微笑んでくれました。


日向君のお母様に


『あんな嬉しそうな顔を、久しぶりに見ました。勉強が嬉しかったんですね。楽しそうでした。異変にも素早く気付いてフォローして下さってありがとうございました。素敵な看護師になってくださいね』


とお言葉を下さいました。看護師長にも一生懸命な姿が伝わったんですね。これを励みに頑張って私みたいになりなさい。と笑いながら仰っていました。


ん? 私みたい? 看護師長ってことですか? いやいや、まだ学生ですし看護師国家試験さえ受験してないですから。ナースステーションが笑いに包ませた瞬間でした。







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