地球にやって来ました
蝉が騒がしい夏の日の山奥に、大きな魔法陣が光を放ちその光が消えたとき一組の男女が現れた。
驚いた蝉が飛び立ち辺りは静寂に包まれ、二人の声がよく響く。
「だぁーーーあのクソ王マジ腹立つわー!あんな国王の国とかもう滅んじまえ!」
「お兄ちゃん言い過ぎだよ。確かに勝手に転移させられたけども、こっちの世界ではいいことあるかもよ」
「そうは言うがな妹よ。今の俺たちってココドコ?ワタシハダレ?な状態な訳じゃん」
「ワタシハダレ?は、違うと思うけど・・・」
「ところで妹よここどこ?お前のスキルで解るでしょ?」
「こっちの世界で使えるか分からないけど・・・一応やってみるよ。【世界検索】」
妹と呼ばれた少女は、元の世界で持っていたユニークスキルでこの世界の情報にアクセスした。少女の持つ【世界検索】は、視たものに関しての情報を読み取ることができる。
「お兄ちゃん一応使えたけど、さすがに山のなかじゃ、ちょっとしか解らないよ」
「少しでも解れば上出来だよ。で、ここどこ?」
「んと、チキュウっていう世界らしいよ、世界というより星かな?それで、ここはニホンっていう国らしいよ。私たちのいた国みたいに王政じゃなくて、ミンシュシュギの国だって」
「おお!ここにはあの腹立つクソ王みたいなのがいないのか!」
「お兄ちゃん・・・・・・はぁ。とりあえず人が多いところに行くよ。ここじゃあまり情報が手に入らないし」
「妹よこの世界でも魔法使える?お前の魔法使えないと本当に危なっかしいからな」
「なっ!!あ、危なっかしいって何よ!他の人よりちょっとだけ運動が苦手なだけだよ!」
少女は心外だと言うように否定するが。
「妹よ、魔法で【身体強化】を使った場合はその限りじゃないだろうが、一日の活動限界が八時間でさらに走る=必ず一回転けるなどの天然ドジっ娘を自ら体現しているやつが、他の人よりちょっとだけ運動が苦手だけですまされるとは思わないが・・」
「なっ!そんなわけないじゃない!」
少女の顔が赤くなり、キッ!と兄と呼ばれた青年をにらむ。
「とりあえず、魔法使えるかやってみ、出来るかできないかで、今後色々と考えんといけないしな」
「スキルは使えるんだから使えると思うけど‥あっちの山でいいかな【ファイヤボへっくちゅん!」
ドカーーーン!!ガガガガガガ・・・・・・。
「えぇっと、・・・やっちゃった?」
「・・・妹よ【ファイヤボール】の威力がおかしなことになってるぞ。本来ファイヤボールは、当たれば相手を怯ませるぐらいの威力のはずだが・・・隣の山の山頂付近がが吹き飛んでるし」
「あ、あはははは」
少女は目を泳がせながら顔を引きつらせて笑っている。
「今のは上級魔法の【エクスプローション】と同じぐらいの威力だな。くしゃみ一つで初級魔法を上級魔法に変えてしまうとは流石は魔法の天才だな。今までまともな魔法が発動したことはないけど・・・。まぁ、それはそれとして、魔法使えることが分かったからよしとしよう」
「・・・うん」
少女は、青年の真っ当な指摘にすっかりと意気消沈している。
長い沈黙が続くなか青年が、声を発した。
「とりあえず行くぞ、妹よ。どっちにいけばいい?」
「今向いている方向が西だから反対に進めば町に着くよ」
「んじゃ、行くかね」
しばらくの山道を進んだ二人は町につくと感嘆のこえをあげた。
「「なっ、なんじゃこりゃーーー」」
そこは二人がいた世界とは遥かにかけ離れた世界が広がっていた。
町には立派な建物が建ち並び、それぞれの建物の中から昼間にも関わらず明かりが点いているのがわかる。だが、その明かりからは魔力が一切感じられない。さらに、きれいに整備された道を鉄の馬車が走り、空には鉄の鳥が飛んでいる。人々は一目見ただけでも仕立てのいい服だと分かる服を着ている。
「妹よ、あの、鉄の馬車はなんだ?馬が引いてもないのに、車輪が勝手に回っているぞ」
「あれは、クルマだね。ガソリンっていうのを燃やして動かしてるんだって」
「がそりん?まぁいいや。妹よもう一ついいか?あの、空を飛んでいるのはこっちの世界のドラゴンかなんかか?」
「あれは、ヒコウキっていう乗り物だね」
「・・・・・・・。この世界凄すぎる。妹よ、俺たちはこの世界でうまく生きていけるのだろうか?」
「お兄ちゃん奇遇だね私も同じこと考えてたよ。まぁ、私には【世界検索】があるから文明の違いがあれど問題ないけどね」
「ところで妹よこれだけ視れば大体のことは解るんじゃないか?」
「うんすごーく色々と解ったよ。私たちの世界よりもすっごい、発達してるし。私は博識だって言われてたけど、今入ってきた情報だけで心が、ポキポキと音を立てて崩れていく音が聴こえるよ」
「うん、俺にはよくわからんよ」
「この世界はやっぱり言葉も違うみたいだね、私の死蔵スキルが役立つときがようやく来たよ。【言語理解】」
「初めて使ってるのを見たよそのスキル」
「向こうの世界では全種族共通の言語使ってたからね・・・感動で涙が出てきたよ」
妹が感涙に浸っている間に青年は別のことを考えていた。
「妹よ、言語理解のお陰である程度の知識が入ってきて、この世界での俺たちの名前を思い付いたんだが、俺が決めても良いだろうか?」
「いいよ、お兄ちゃん。赤い髪のお兄ちゃんは、この世界では、かなり浮くと思うけどね」
「お前はいいよなきれいな黒髪でさ、瞳は左右で違うオッドアイだけどな」
「あはは、魔眼だからね」
少女の容姿はまだ、幼さを残しながらも美しく、きれいな黒髪に、左目が緑色で右目が赤色のオッドアイで、背丈は170センチ近くと女性にしては高めの身長である。胸はまな板だが・・・。
「左目は、時と、空間を操る【時空の魔眼】、右目は、すべてを見通す【真理の魔眼】だったか。」
「そう。【世界検索】と【言語理解】は、【真理の魔眼】から派生したスキルだね」
「お前の持ってる魔眼って、本当に便利だよな【時空の魔眼】は、異次元空間に、物を入れられたり、転移にも使えるし」
「転移って言っても、発動までのタイムラグが長いから戦闘では、やくにたたなかったけどね」
そういって、少女が、肩を落とす。
「ところでお兄ちゃん、どんな名前にするの?」
「ようやく戻ってきたな、まぁ、そんなに大層なものじゃあないけど、お前が上山夏で、俺が上山夏樹だ」
「なんかすっごい、安直な名前だね」
「あぁ、俺もそう思う。山の上半分を破壊したため上山。んで、今の季節が夏だから夏という名前だ」
「えぇ!てっきり山の上に転移してきたから上山だと思ったのに、何でそんな人の古傷に塩を塗るの!」
少女・・・いや、夏が涙目になって、叫ぶ。
「古傷というより、まだ、生傷だな。時間にしてまだ、三十分も経ってない」
「くっ!・・・」
「まぁ、とりあえす名前はこれで決まりとして、あとは、金銭と衣食住の確保だな」
「金銭は、私の異次元空間にある宝石類を売って、当面の資金にするとして、コセキというものを作った方が良さそうだね」
「コセキ?なんだそれ?」
夏樹が頭の上に疑問符を浮かべている。
それに、夏は笑顔で答える。
「この国で、生活するに当たって大事なものです。まぁ、これ以外にも大事なものは、結構あるみたいだけどね」
「どうやって作るんだ?それ」
「それは、ほら、私のスキルの【存在の上書き】で、元々この世界で生まれ、この世界で生きてきたこととして私たちの存在を上書きして、その他諸々をちょちょいっと違和感がないように弄れば大丈夫だよ」
自信満々に語る夏に夏樹は苦笑いを浮かべている。
「なにそのスキル。チートすぎる。そして俺が役立たずすぎる・・・」
「大丈夫だよお兄ちゃん、今まで私を守ってくれてたんだから。こういうことなら私の得意分野だからね。そもそも、この【存在の上書き】は、使用後その日一日動けなくなるし、一度使うと次に使えるようになるまで一年かかるんだけどね」
「便利なものはその分代償がいるんだよな。まぁ、色々頼むな夏」
「任せて!」
二人はこれから待ち受ける新しい世界に向けて、歩き出す。
ちなみにこの日、後にお世話になるアパートの大家さんに出会い、アパート入居する。そして、この二日後、大家さんの逆鱗に触れてしまった夏は、後にトラウマを負うことになる。大家さんに男の話は禁物である。




