彼氏ができました
「明日から学校かぁ緊張するな~」
この世界に来て一年と半年、私はこの世界についてより詳しく調べてきた。
そう、私はこの世界の人間ではない。異世界人というやつです。
ある依頼を国王陛下より授かり、帰ってきたら急に異世界へポイされてしまいました。
何が言いたいのかというと、要は厄介払いされたわけです。
それにしても驚いたね。異世界からの召喚魔法があるのは知っていたけど、その逆があるとは知らなかったよ。
でもね、よくよく調べてみたらランダム転移だったんだよ!あり得ないよね?
国王様は『達者での』とかなんとか言っていけど、どの次元にある世界に行くのかも分からないんだよ?その先が空気がろくに無い世界かもしれないし、進化したゴキブリが生息しているとある星かもしれないのに・・・。
でもまぁ、運良くそのような世界にはいかなかった。
日頃の行いのお陰かな?
それで、この世界についてだけど、簡単にまとめると以下の通りだ。
・この世界は地球と呼ばれている。私がいるところは日本と呼ばれている国らしい。
・この世界では、私の世界とは違い、魔法ではなく、科学が発達した世界であること。
・この世界では魔法は存在ず、もし魔法が使えると言ったら、主に中学二年生がかかる病にかかっていると思われて、後に黒歴史になるらしい。気を付けよう。
・私はこの世界でも魔法が使える。実際に試してみたのでこれは間違いない。山の中で魔法使ったら、土砂崩れを起こして山が半壊したりした。後に分かったことだけど、原因不明の爆発により土砂崩れが起きたとして大事になったそうだ。幸い怪我人はでなかった。
・威力は向こうの世界とあまり変わらなかった。この世界には魔素がないため、これ以上威力が上がらない。いや、これ以上威力を上げようとは思わないよ、これ以上やらかしたらいずれお縄コース確定だからね。
・身体能力は、向こうの世界とほとんど変わらない。一般人より少し悪いぐらいである。けっして運動音痴とか、ドジっていうわけじゃないよ。ないったらない!
・勉学の方は断然こっちの世界の方が上だね。向こうの世界でかなり博識だった私の心がポキポキ折れていく音が聴こえたよ。まぁ、私の場合はすぐに十分な学力は身に付けれたけどね。ん?言葉はどうしたのかって?それは、ほら、魔法でちょちょいとやっちゃえば、ね?
まぁ、こんな感じかな。
「~♪~♪~♪~♪」
私はスキップしながら商店街を歩いている。ちなみに二回ほど転んでいる。暖かい目で見られているような気がするけど、気にしたら負けだよね。
私には兄がいる。私と一緒にこっちの世界に来て、明日からは新しいバイト先だそうだ。実はもう、一四回クビになっていたりする。
あぁ、お金の心配はありませんよ。私がこの世界の知識を得たあと、株を買い一財産を築きました。なので老後も安心です。えっ!?兄が情けなさすぎるって?まぁ、お兄ちゃんですからね。仕方ないですよ!
明日から学校に通うのです。いきなり高校生です!前の世界では飛び級していたので、同年代の友達はいなかったのでかなり楽しみです!
そう。ついに!同年代の少年少女が通う高校に通うことができるんです!友達百人作ります!恋もしてみたいですね。青春ですよ青春!!ん?戸籍とかその他大事なものはどうしたかって?それは、ほら、魔法で(以下略)
商店街を抜けてあと少し歩けば、家が見えてくる。
といっても、アパートですけどね。
私にとって大家さんは天敵です。トラウマを植え付けられました。大家さんめっちゃ怖いです。(ガクガクブルブル)
「キャー、危ない!」
ん?何か悲鳴が聞こえた気がするけど、どうしたんだろう?
すると、目の前にすごいスピードでトラックが迫ってきていた。
今から魔法を使っても間に合いそうにない。
あぁ、短い人生だったなぁ。せっかく学校に通えるようになったのに。
ごめんね、お兄ちゃん。先に逝って待ってるね。
目をつむりすぐに来るだろう衝撃に、備える。
だが、いつまでたっても私を天国へと連れていく衝撃が来ない。
恐る恐る目を開けた私は、先ほどとはまた違った衝撃に襲われた。
目の前で少年が、トラックを片手で止めていたのです。
私の記憶が正しければ、この世界で時速八十キロ程で突っ込んでくるトラックを片手で止められる生物は存在しないはず・・・。
お兄ちゃんなら可能だと思うけど、私と同じ異世界人なのかな?
背丈は私と比べて、頭一つぶん高く、顔立ちは中性的で・・・要はイケメンという生き物だ。命の危機を救ってもらったせいで、少し修正が入ってしまってるおそれがあるけど。
「大丈夫?」
「大丈夫です、ありがとう・・ございます」
「ん、ならよかった」
私の顔が赤くなっている気がする。
少し修正が入ってしまっているおそれがあるとか言っていた人出てきてください。修正率ゼロパーセントの本物ですよ?
はい。すみません。修正が入ってるとか、意味の分からないこと言ってすみませんでした。
「これで二回目」
二回目・・・二回目・・・二回・・・うん。分からない。
「何がですか?」
「会うのが二回目。一回目は一年半前ぐらいかな?不思議な力使って、隣の山を爆発させて山を半壊させのを見た」
見られてたーーーーー!!
いや、確かに山奥だったからって、気にしてなかったけど。
まさか、見られてたのか・・・研究所に連れていかれて解体されるのだろうか・・・いや、そもそも、この人が助けてくれたんだし、彼はどちらかというと、異世界人側の人間だと思う。片手でトラックを止めるとか普通にあり得ないことだし。
それに、彼はそんな悪い人ではないと思う。
これでも、私は人を見る目はある方だ・・・と思う。
「見てたんですか・・・」
「山で散歩してたら、たまたま」
「と、とりあえず、一旦ここを離れませんか」
「ん、了解」
私と彼は公園へと歩いていく。
この時、周りの視線など全くきにしていなかった。
気にしたところで、何もできないからね。
こういうときは、周りの視線に気づいてないふりをするにかぎる。
「名前、何て言うの?」
公園についてベンチに腰を落ち着けると、彼から名前をきかれた。
「夏です、上山夏と言います。」
「分かった。俺は鳴神秋よろしく」
「よろしくお願いいたします」
「一ついい?」
「は、はい。何でしょうか」
「夏、俺の恋人になって」
唐突に告白された!!ど、どうしよう今まで恋愛経験ゼロだし、し、しかも、なんかこう、すっごい、ドキドキしてるような気がするけど、会ったばかりの人とこっ、恋人になるって・・。
「夏はかわいいし、化け物見たいな俺を見ても怖がらないし、なんか不思議な力持ってて、なんか俺と似てて、一目惚れ?したっぽい」
ぐはーーーー!や、ヤバイ。経験のない私にはきつすぎる!
というか、私でいいの?
彼、格好いいから、もっといい人と恋人になれると思うんけど。
「えっと、それは、その、え~と・・・」
「ダメ?」
「だめじゃ・・・ない・・です」
この世界にきて二回目の春。私、上山夏に彼氏ができました。